第175話 家族、大切に。

 なんとか養子にならず後見についてもらえることになってよかったよ。ありがたいことだけど王家に食い込みすぎると余計な人まで寄ってきそうだもんね。あくまでも家族として、政治にはノータッチで。でも誰かが理不尽に踏みにじられるようなことがあるならきっと手を出してしまう。カインさんの根っこにそういうところがあるのを僕は知ってるから。だって最初に困ってた僕に声をかけてくれたのはカインさんだからね!

「では王城へ行こうか」

「はい!」


 いつから正面突破はできないと思っていた…?

 キローゲ様(おじーちゃんと呼びなさいって言われたけどまだ無理)がいるからするっと行けるんだぜ…?

 というか第二王子様のお陰で騎士の一部は味方らしい。カインさんに目元がちょっとだけ似てるけどぐっとしかつめらしい顔をしてる。あと一回り大きいがっちり体育会系なひと。ひょろっと弱っちそうな僕を見て顔を歪めてる。

「貴様が弟の…ふん、何故こんな平凡に。オイ貴様カインをたぶらかしていい気になるなよ?何か企みでもしたら即斬り捨てるからな!」

 第二王子様は僕が気に食わないみたい。具体的には可愛い弟をたぶらかす男が。

「だが貴様に怪我などさせればカインが悲しむ…仕方ないから今しばらくは守ってやる!」

「…ありがとうございます」

 斬り捨てたい程気に食わないのにカインさんを慮り顔をしかめつつもちゃんと守ってくれる宣言。良いお兄ちゃんのようです。



 王城のエントランスホールには味方じゃない第一騎士団の人たちが十人くらい見張りについていた。

「第二王子、こちらには近づかないようにと大公と宰相から伝達があったはず」

「我が家へ帰るのに他人の許可など要るものか」

「いや、王城でそんなわけには」

「ええい邪魔だ!オイ、いるだろうルーファウス!何とかしろ!」

「…は」

 押し問答になりそうだったけど第二王子様の呼び掛けに応えてルーファウスさんが現れると他の数人の騎士と協力し、あっという間に貴族派らしい騎士たちをまとめて捕縛してしまう。

「ルーファウス、宰相はどうした」

「は。父は…いえ、あの方はもうあちらに」

「そうか。…残念だ」

 現宰相はここにいるキローゲ様と違って貴族派についたのか。今のを見るとルーファウスさんはこちら側のようだけど、実父だけに複雑なんだろう。第二王子様の言葉に眉間に皺を寄せて俯いたままで頷く。

「お祖父様、いえキローゲ様。この処分いかようにも」

「……ふむ。ならばこの少年の守りにつけ」

「は…しかし」

「実の親子であろうが己以外の罪まで背負うことはない。ルーファウスよ、罪悪感に駆られると言うなら今まで以上に王家に仕えよ」

「…はい。仰せのままに」

 顔をあげたルーファウスさんの目端に溜まった水滴はこぼれなかったけど、表情には曇りはもうなかった。


 キローゲ様とルーファウスさん、味方らしい数人の騎士とダンスホールに使われる広間を目指す。

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