第174話 焦りと対策。
「既に養子手続きはしてあるのか」
お茶を上品に飲みながらキローゲが問う。
「ええ、平民として私の義息子になっています」
気後れすること無く答えるガザシ父さん。
「ふむ、しかしカイン王子と…であろう。ちと足りぬな」
「………」
「どうかな私の養子」
「ごめんなさい僕はガザシ父さんの義息子なので」
淡々と進めようとするお話をバッサリいきます。いやマジでどゆこと?僕全然わっかりませーん。いやわかるけど今考えなきゃいけないことじゃない気がしますよ。
「坊主…」
「ていうよりなんでバレたんでしょうか」
ガザシ父さんが感動している様子ですけどスルーしますよ。
「前宰相だから?」
「草のものって何ですか?」
「密偵を各地に放ってあるのでな」
「………」
「あの、先にカインさんと合流」
「あまり急くでない、カイン王子を信じなさい」
「でも」
他の何かをするより考えるよりカインさんの傍に行きたい本心を質問でごまかしていると見透かすように見つめられて口をつぐんだ。
「心配か」
「…はい」
「それは愛情であろう。しかし時には信じて待つことも大事だ」
「………」
「王子は頼りないか?」
「そんなことはっ」
頼りないのはむしろ自分の方だ。
「ならばもう暫し準備にいそしもう。異世界より来たと知れれば狙う愚か者も増えるであろう。そなたは王子に必要な人物と心得る。これは考えておかねばならぬことよ」
「カインさんが望むなら…全力で」
よしまずは隠蔽魔法ですねわかります後は姿を変える幻影魔法とか?
「ちょっと待て今妙なことを考えてるだろう自重しろよ自重!」
「じゃあ魔道具を開発」
「バレないようにしろ」
×××××
前宰相キローゲサイド
仲良く言い合う二人を見ながらメイドは下がらせたゆえ自ら新しい紅茶を淹れて飲む。異世界からの少年に会って笑いを噛み殺すのに苦労するとは思わなんだ。しかし会ってみればなんとも周囲を微笑ましくさせる人物であった。長年気がかりであったことが一つ解決して清々しい気分で紅茶もますます旨い。
なんだかんだ話し合いを進め少年の後見人になることを決める。カイン王子が王家より籍を抜いたとて家族の縁はそうそう切れぬもの。いずれまとわりつき横槍を入れる者が出ることだろう。炙り出す手もあろうが最終手段として振るう権力も与えておきたい。身分制度の無い世界から来た少年は思うところもあるようだったが…納得してじじいの我儘を受け入れてくれた優しい子よ。欲を言うなら二人で王家に戻って王太子の支えになって欲しいのだがそれは欲張りすぎだろう。だが配慮し指示を出したのは王太子と知れば出来る限り協力すると申し出てくれるとわかる人柄。
カイン王子、このような優しい少年を泣かせてはならぬぞ?
ついつい少年側に肩入れしてしまう。体格こそ今も大きいものの老齢となった前宰相は未来に想いを馳せて目を細めるのだった。
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