第143話 地の精霊。
「まさかこんなとこに地の精霊が封印されているとは…」
第二ナンオウとなった洞窟のある行き止まりの分岐点に周囲の壁に溶け込むようにして地の精霊の封印石があった。
ぱっと見同じ何の変哲もない岩壁なので気づかず通り過ぎてしまうところだったけど、シェイドさんに引き留められてよーく見るとうっすら周りの色より少し濃くなっている少し縦長の六角形の部分があり、それが地の封印だったのだ。
闇の精霊シェイドさんの時とは違い、精霊の姿は見えない。
ただ、気づいてみるとほんのり気配を感じるだけだ。大分薄いのが不安になる。
もしかしてシェイドさんより弱ってる?
「地の、解放者を連れて来たである」
「えっと、地の精霊さん?今から魔力を込めますよー?」
気配が少し強まったけどすぐにもとの弱々しい感じに戻ってしまう。
僕はシェイドさんに目配せして、両手を壁面に当て意識して地の属性魔力を込めるように目を閉じた。
魔力を流し始めるとシェイドさんの時と同じ魔言の帯が浮かび上がる。
しかしシェイドさんの時より層が薄い感じだ。僕が持つラノベのイメージのように四大精霊より光と闇の精霊の方が強いってことだろうか。
そんな考えを巡らす余裕があるほどで、封印にヒビが入るのも前より早かったようだ。
「割れるである!」
「…っ!」
二回目なので封印石が壊れる前に離れるのもスムーズに行った。
砕け散った欠片から庇うように顔の前にあげた腕を下ろすと壁にポカッと穴が開いていた。
壁の強度が心配になったので地魔法で塞いでおく。
地の精霊はと見回すと足元に小さな人影がくずおれるところだった。
「地の!」
「っ…地の精霊さん!」
慌てて抱き上げるがぐったりとして起き上がれないようだ。
シェイドさんは元の力…存在力とでも言うものが大きかったため体が縮む程度で済んだようだけど、地の精霊さんは存在力の差からとても弱ってしまったらしい。
「精霊さん!?」
僕は焦って声をかけたのだが、シェイドさんは見分するように地の精霊さんを覗き込むとひとつ頷いて指し示す。
「……む、大丈夫である。しばし休養が必要であるが、ほれ」
「…え?」
地の精霊さんの肩口まである茶色の髪を避けてみると目を閉じたままではあるが苦しげではなく呼吸も落ち着いているようだ。…というよりも穏やかすぎるほど穏やかである。いっそのんきな寝息と言うべきか。
地の精霊さんは疲れ果てて眠っていたのだった。
何とも言えない脱力感を味わいながらも地の精霊さんの解放は成功したことで安心し、ほっと息を吐く。
とりあえず亜空間収納に入らないように閉めたバッグの上に横たわるようにさせて運ぶことにした。
「次は…」
「そうであるな。次は風のが近いであるか」
風の精霊さんはここまで弱ってないといいのだけれど。
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