第144話 移動と準備。
前はヤマの町を経由して行ったレイクタウンに今度は別経路で行く。
シェイドさんが言うにはレイクタウンの方から微かに気配が感じられるらしい。
急ぎだから最初から乗り物利用しようってことになって、シェイドさんが黒馬を出してくれたのだ。
黒狼と同じように黒靄が凝り固まったかのような存在感。
僕には見上げるような巨体………ってこれ乗れなくね?踏み台くださいよ。ってなったので縮んでもらいました。ゴメンね、小さくて!
ばん馬ほどの大きさだった黒馬は僕が手をかけて乗れるポニーくらい?になってくれた。
颯爽と跨がる、のは無理なのでよっこいしょとよじ登って、僕の前に地の精霊さんを寝かせて落ちないように固定、後ろに闇の精霊シェイドさんが乗る。
一度戻ってガザシ父さんに助言されつつ食料など補充して出発した。
帰ってきたら異世界転移や魔法のことも、全部話したいな。
黒馬は高速で走る。けど揺れは少なくて、方向の指示も自分で判断してくれて、乗馬初心者の僕でも超安心安全だ。
ものすごい跳躍力で障害物を飛び越えたり急カーブで避けたりするんだけど。
背中の一部がうにょーんとのびてシートベルトみたいに固定しているから心配ない。
「シェイドさん、レイクタウンに風の精霊さんは封印されてるんですか?」
「恐らく、であるがやはり気配が少し弱いであるな」
「…」
やっぱりそうか、急がなきゃ。僕はそう思って、でもじっと先を見つめる。
焦りすぎて足元がおろそかになっては元も子もないのだ。
必要なもの準備すべきことをやってこそ目標達成に繋がるんだ。
ラノベを読むだけじゃ想像でしかなかったものがここにある。
てことはそこに困難も障害もあるってことなんだよ。
だから確実に進むために、やることやんなきゃ。
さて今この場合に必要な、今できるのは何だろう?
弱っているだろう精霊さんのために魔力を貯めることとか高めることが必要かな。
バッグから取り出したいくつかの素材となる石を手に握る。
黒馬が賢くて優秀なので手綱無しで両手がフリーだから魔石作るのもできるし集中できる。
そして石を手に包んだままで目を閉じて瞑想を始めた。
いつもは全身を巡らせる魔力循環を石を通してやっていく。
世界中を自由に吹き抜ける風を思い浮かべ右手の先から身体中を通りすぎて左手へ、両手で持った石を通しまた右手へ。
自分が円環になったイメージで巡らせながら、少しずつ石の中に堆積するように魔力を流す。
風の精霊さんが元気になるように。
馬上での瞑想循環をしばらくすると魔力が堆積するようにと念じたお陰かもとの大きさより一回り膨らんだ魔石が出来上がった。
地の精霊さんにもと思ってもうひとつ草木が生い茂る豊かな大地を思い浮かべ魔石を作ってみる。
同じようにもとより少し膨らんだ魔石。
油膜のようにぬらりと光る地の魔石をなんとなく地の精霊さんの眉間に当てると、シュワシュワと炭酸の泡のような音を出して溶け込んでしまった。
「え゛っ」
「ぬ、目覚めるである」
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