第128話 世界情勢。

「よく来たである」

 声は小さいけど目の前の小さな男性が喋っている。

「よい月夜である。まず自己紹介しよう。わしは闇の精霊、シェイドである」

「えっと…こんばんわ?」

「お主のことは神より聞いているである。よき隣人足り得ると」

「はあ、ありがとうございます?」

 思わぬ神様の仲介があったらしく半疑問系になってしまうが気にしないようで男性、シェイドさんは頷いてる。

 よく見ると彫りの深いアラビア系イケメンなんだけどこのサイズ感で可愛く見えます。

 羽っ子たちとはちがって羽はないようだが大きさは二倍半くらい大きい。


「我ら精霊は人の子とは付かず離れず。気に入れば友となることもあるが基本は不干渉である…が、身に降りかかる火の粉は振り払うものである。今回はそれに近い」

「ええと?」

「お主には会わぬものと思っておったがなんの因果か、ここへ来たである。出来れば解き放って欲しいのである」

「解き放つって…シェイドさんを?」

 口は動いているしこの距離なら生の声で話せるようだけどそれ以外は一切動いてない。

 確かに不自由そうである。…口癖うつっちゃうよー。


「左様である。と共に、他の精霊たちもであるな」

「他のって…え?複数?それは、なんでそんなことに」

 他の精霊って言うとお決まりの四大精霊とか光の精霊とかかな?

 だけどなんの理由が、権利があってこんなことをするのだろう。

「さての。人の子の理由なぞに興味もないのであるが我らは総じて自由を愛するもの。この身をこうしてとどめられるのも飽きたゆえ」

「あ、飽きたから、なんですね」

「寿命の長きゆえにたまさか人の子と遊ぶこともあるが、此度は条件を満たさぬ」

 封印の理由も謎だが解放理由も謎だった。

 まさかの遊びに飽きたから、とは。

 しかし遊びに興ずる条件?

 友であればそう厳しくもなく無条件でも遊ぶらしいけど友でない人の子とは交換条件によって力を貸すものらしい。


「対価無き封印。ゆえにこのままでは人の世は破滅に向かおう。すでにお主、会っておろう」

「へ?」

「ドロドロになった魔物である」

「ドロドロって、あ!ゾンビ蜥蜴!?」

「左様である。我らは人の子とは互いに不干渉が基本。しかし我らが自然にあってこそ世界は正常な営みをもたらす」

「………え?」

「今の我らは存在を力ごと封印されておるゆえ、自然界に魔力が満ちず作物が枯れておる。魔力の調和が崩れるゆえ魔物も変異しているである」

「子精霊たちじゃ魔力は足りないんですか」

「あれらは我らの魔力で存在を固定するもの。すでに数を減らしているのである」

「そんな、それじゃあ」

「人の子は生きられぬであろう」


 人間は食べるものがなければ死んでしまうだろう。

 だけど精霊は自然と調和し、魔力を満たすことで世界と相互付与で生きられるという。

 精霊が世界と同一存在だとは驚きだ。

 あれ、でもそれなら…放置すればいずれ封印した張本人はいなくなって解放されるんじゃないか。

「気づいたであるか。なるほど、なればこそ雛に気に入られるのも道理であるな」

「え?カルモ?」

「ぎゃう」

「一方的にしか考えられぬ人の子であれば交わらぬである。しかし思いやり与える事を知る者なれば、わしも友として力を貸そう」

「あ、ありがとうございます!」

「解き放ってくれたらの」

 あ、はい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る