第127話 精霊に聞く。
直接頭の中に語りかけてくる声にきょろきょろと見回した。だけど暗闇に目を凝らしてやっとうっすら見える羽っ子たち以外に何もない。羽っ子はしぐさや雰囲気でなんとなくフワッとした感情は読み取れるけど、こんなはっきり喋らないみたいだし。
「えっと…どちら様でしょう」
『うむ、わしはここに封印されておる精霊である』
「…精霊って、子精霊じゃない、んでしょうかね?」
『そうである。まあ噛み砕いて言うなら親精霊でもいいであるが』
「親精霊…」
『であるな。あー、声だけというのも味気ないであろ。そこで突っ立って話すのもなんであろうし、最奥まで進むがよい』
「え、それって親精霊さんはこの洞窟の一番奥にいるってことですか」
『うむ、そうである。久方ぶりに我ら以外の声を聞いたである。面と向かって話してみたい。待っているである』
「あ、ちょっと」
何も言わなくなってしまった。もしかしてこういう風に声を届けるのって、疲れるのかな。封印されてるって言うんだし。
行動できるならさっさと王都に向かいたいとこだけどもう夜で、今日はこの洞窟で寝るつもりだったのだし行ってみるか。
洞窟の中は複雑ではなく分岐もすぐ突き当たりになるようでほぼ一本道だった。舗装された人工のものではないからか地面は荒く外の月明かりもないためにしょっちゅうつまづきそうになったけど、さっき親精霊さんと話したからか子精霊たちが服を引っ張ったり支えてくれて助かった。
親しくなったものとみなされたんだろうか?カルモのお陰もあるのかもしれない。しばらく見てなかったステータスの称号欄に精霊王の雛の友って出てたから。ラノベやゲーム的に言うなら称号効果ってやつ?
だけど、よーく見ると羽っ子たちの楽しげな表情が見えて、仮想空間とかでない現実のやり取りに称号効果とか無視でいいかと思う。だって交流して親しくなるのは普通のことだよ。そして逆もしかりだと思う。
「…ぎゃう!」
カルモが拗ねました。
「ごめんって、忘れてたわけじゃないよー」
つるすべの鱗を撫でて機嫌を取ると、ずっと手を繋いで歩くことになり。周りを羽っ子子精霊たちが飛び回って、全く危険なんてなかった。
あっという間に最奥の大きく広がった空間に出る。ここはさっきまでの道と違い所々天井部に穴が開いていて少しだけ月明かりが差し込んでいた。中央に上からと下から盛り上がった鍾乳石がありその間に挟まれて月光にきらめく黒曜石みたいな艶のある漆黒の石があった。大きさはカルモの半分くらい。僕より小さい子供サイズってとこかな。真っ黒なんだけど透明感がある。
その中に長い黒髪の、先は闇に溶けているような…黒目で上半身に一枚の布を巻き付けてゆったりしたズボンと編み上げサンダルを履いた、一人の男性が閉じ込められていた。
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