第七章 平凡、魔法使いになる。(王都、鳴動)

第102話 魔石の価値。

 色々な町を通り観光旅行をして、あと少しで王都というところまで来た。

 ここまででわかったことだけど僕は無詠唱魔法を使えるし作れるけど、どちらかというと魔道具に興味があるってこと。

 だから、この世界で生きていくに当たっての仕事をナンオウ警備隊だけじゃなくって魔法使いとして魔道具師をやっていきたい。

 二人の神様へメールにも書いて決意表明としたくらい本気で。

 モリーも協力してくれるっていうしカルモもできることであれば手伝うって言ってくれてるみたい。

 将来について今、そう思いを馳せて王都への桟橋を渡るところだ。


 王都は大きな城とその周りに寄り集まった商店を起点に扇状に広がる都市である。

 門衛は鋼鉄の鎧を身に付けた屈強な者で堀や水路があちこちにあるので防衛にも強そうだ。

 建ち並ぶ商店も間口が広く立派なもので人の行き来は多い。

 道は整えられているが自然な木立も多くて日本のビル街のような人工的な狭苦しさは無いようだ。


 朝早くに到着したので宿を先に決めると、早速魔石を売っているところを見に出掛けた。

「わああ……」

 露天のような気軽な店はないためカインさんが知っていた大きな店に入ることになり少し気後れしたが、棚に並んだ色とりどりの魔石に感嘆のため息が出る。

 大きさはやはり自分の持っている魔導石より一回り二回り小さいが様々に色づききらめく石はどれも美しく見えた。

「いらっしゃいませ。魔石をお探しですか?」

「は、はい。こんなにきれいなものなんですね!」

「ええ、大きさもなかなかのもでしょう。当店自慢の品なのです」

 ここに置いてある魔石は世間的には立派な大きさらしい。

 咄嗟に声を出さず頷くにとどめた。

「えっと、ひとつでいくらくらいなんでしょうか…?」

「こちらのものでしたら大体金貨十五枚程度になります」

 てことはじゅうごまんえん………。

 僕が持ってる拳大の魔導石いしが一万枚で一千万だから…ろっぴゃくろくじゅうろくぶんのいちくらいか?ハハ。

 もう乾いた笑いしか出ませんがなにか。

 魔石ってお高いんですねえー。


「ああ、もしナンでしたらもっと小さな屑石もございますよ」

 僕の様子に苦笑した店員さんが気を利かせてくれて、左隅にあったワゴンに積まれた石の所へ案内してくれた。

 よ、良かった。

 余裕はあるけどたくさん試作したいからね。

「お決まりになりましたらこちらの呼び鈴をお使いください。ご質問等がある場合もお気軽にどうぞ。では、ごゆっくりご検討ください」

「ありがとうございます」


 店員さんが奥へ戻るとカインさんに目を合わせて魔石に向き合う。

 魔道具の試作のために大量に仕入れるつもりだったけど、吟味して必要量だけ買うことにした。

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