第103話 王都の下町。
よく考えたら石ころ拾って僕の魔力を込めれば魔導石になるんだから加減すれば魔石も作れるんだよね。
毎度王都に買いに来るくらいならもっと別の国とか行ってみたいし。
なのでそこそこの数小さな屑石を買ってお店を出た。
カインさんにはまだ言ってないけど。
石によって違うとこがあるかもしれないし、ナンオウを拠点にして時々でいいから旅をしてみたい。
カインさん、と。
それにしてもナンオウ質屋の糸目店主さんはこんな物価高そうな王都で買付をしてるってことはお金持ち?
一点大きな魔石を買うとしても小粒のをたくさん買うとしてもそこそこかかりそうだよ。
「ふう、目的だった魔石は買えましたね」
「そうだね。他のところも見る?」
カインさんがもっと気軽に買えるお店があるから、と案内しようとしてくれたんだけど途中遮るように鳴った僕のお腹はKYですよね…。
「…ふ、そういえばもうお昼だね。美味しい所こっちにあるから」
「はひ…」
昔王都に居たことがあると言うカインさんの先導に従って歩くと高級なお店のある通りを外れて、豪華さには欠けるけど人通りの多い活気ある町中へ入る。
大きな王都の真ん中を通る水路の西側に当たる場所だそうでいくつかある橋を渡ると|下町になるようだ。
東が高級店と貴族の館が多く建つ上街と呼ばれているらしい。
あちらは閑静で時々馬車が通るくらいでちらほら見えるのは使いの者か応対に出る商人ばかりだった。
対してこちらは露天も並ぶくらい広い通りをメインにして小道がたくさんあるそうだ。
そこそこ整った店もいくつかあるが地べたに商品を広げる方が多い。
子供から大人まで色々な人がそんな店を冷やかしあるいは値下げにいそしみまたは井戸端会議などに励み、と大変賑やかである。
「ふわあ、人多いですねー。カインさんはこんなとこに住んでたんですか?」
「あ~まあね。ほら、あそこの店だよ」
質問を流されたけどそこまで気になったことでもなかったので素直にカインさんが指し示す店の方へ興味を移した。
ナンオウの食堂とよく似た雰囲気の、経年劣化の見える薄くベージュがかった壁とミルキーグリーンの丸みを帯びた可愛らしい屋根の上にトワイスと書かれた看板の店がある。
庶民派のチープな気安さと清潔感の同居が絶妙だ。
「ここは肉料理もうまいけど野菜もうまいんだよ。ここの女将の実家が野菜農家で鮮度が良いんだ」
「おやおや、あんたカイ坊やかい?大きくなって!」
「女将、久しぶり。元気そうだね」
「ああカイ坊やこそ!ん?そっちは連れかい?食べてくんだろ、サービスするよ!さあ入った入った」
かつての馴染みが久々に顔を出したと喜んだ女将に追い立てられるようにして僕らは店に入った。
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