ある上位神のぼやき
直属の後輩に当たる新米神がまたやらかした。
あいつはいっつも居眠りしては何かしら失敗してあわあわしているが、今回のそれは世界の崩壊に繋がる大事であった。
ゆえに女将からの指示もあり新米神のもとへお目付け役として配属になった。
少なからず気にかかっていたこともあり配属自体は渡りに舟と言っても良かった。
「くおら新米今度は何をやらかしやがっ………は?おま、何…」
「あ、せ、せんぱい…この度はご面倒お掛けして…」
「いやお前なんで泣いてんだよ」
「へ?や、泣いてないっすよ」
「いや泣いてんじゃんこんなぼろぼろと」
だが任地についてみればボロボロ泣いてる新米神がいた。
とりあえずワシャワシャと頭を撫でて落ち着くのを待つ間に千里眼で特異点を調べてぎょっとする。
何だアレ、加護つけすぎだろ!特におまけの博愛の加護!!
「バカお前何やってんだ!?アレ、何だよ!」
「そ、それは…」
「お前自分のミスだからってやり過ぎ!」
「だ、だって…」
「ダッテもくそもあるか!おいあれ外すぞ!」
「ええっそんなあ!」
「バカあれ外さねえと特異点どころか特逸点になっちまう」
「と、特逸点…?」
自分のミスだって負い目もあったようだがこいつは多分あの流れのガキに惚れてんだろう。
お気に入りとして目をかける気持ちはわからんじゃないが過ぎればむしろ神のそれは逆に呪いにもなる。
「そうだ。ほっとけばあいつのせいで世界は壊れるし悪者扱いされんのはあいつなんだ。わかるな?」
痛みをこらえるように顔をしかめていたが腐っても神、しっかりと頷いたそいつに俺はぽすっと頭を軽く叩いてシステムにアクセスした。
「コードA399090、管理者ジャクトス上位権限で加護を剥奪………よし」
後輩の仕事を確認するとミスに対しての処理は悪くない。
ただ最後のおまけが余計だった。
それを剥奪する指示に許諾、震える手で半透明のパネルを操作して外すと新米神は長く沈黙していたが。
「………完了、です」
「おう」
こいつ本気で好きだったんだな。
ひとつ乗り越えた男の顔をしていた。
これなら、と俺は新米神の腰を抱き寄せた。
「せん、ぱ…?」
「………よく頑張った。ひとつ階位上げてやる」
「………え?」
失敗続きではあったが真面目に神様業をするこいつに管理上位神の俺は目をかけていた。
そのうち俺の隣へ立つように引き上げたいと思っていたがそこへこの大きなミスだ。
もうしばらくは見守るだけかと考えたがそれをこいつは越えてきた。
恋という感情を知り失恋というハードルを越えて仕事を全うできたこいつなら。
「まだあのガキが好きか…?」
「え…し、知って………?」
「ああ。だがあのガキは下界で生きてる。お前はちゃんと理解してけじめもつけたな」
「………………はい…っ」
こいつはすげえ神になる、と自慢して回りたいくらいの想いを込め強く抱き締める。
「お前はよくやった。そんで自慢の後輩だ」
「ジャクトスせんぱ」
「けどな、そんだけじゃねえぞ。お前は」
その後に続く言葉は耳元で囁いて赤面させてやった。
プロポーズはこいつだけが知ってりゃイイだろ?
まあ初恋ってことで最後のプレゼントは見逃してやったけどな…只でやらせた訳じゃねえよ。
OSHIOKIはじっくりと、ベッドでな…。
巡る魂は運がよけりゃ永遠に見てられるんだから嫉妬しても許してくれよ。
なあ新米神ピスケ、愛ゆえに、だ。
受け止めてくれるよな?
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