第73話 変化することを恐れないで。

 デリカ先生たち調査隊が王都に帰って、結果を伝え物資を定期的に送られるようになった。

 お陰で不足はなく街の人は安穏と暮らせている。

 一般の市民にとってはそうなのだけれど、一部の人間にはそうではなく……。


 頻繁に王都の人間がナンオウの街に来るようになって、変わったこと。

 流通が回るようになった代わりに、自警団の仕事は激増したのだ。

 お陰で勉強をある程度で止めて見回りを増やすようにしてる。

 以前の僕ならやったーとか喜んでるとこだけど実際そんな暇無いですね。

 対人トラブルが増えたんだよ?

 人間相手だと魔物と違って説得が基本なので、こじれないように話を聞くのが大変だよ……。

 チンピラとかなら実力行使で黙らせることもあるけど。

 ちゃんと理由を双方から聞いて話し合いをさせるってのが基本なの。

 後ガザシ父さんから気を付けるように言われたのが、獲物が増えたと思ってか魔物の方もやっぱり増えているみたいで…強い魔物が寄ってきてるらしい。


 そして、もうひとつ変わったこと。


「成人、おめでとう!」

「うわ、ありがとうございます!」

 先日満十五歳になり、この世界での成人というものを迎えたのです!

 寮の一階でみんな集まってお祝いしてくれた。

 マオさんたちが作ってくれたごちそうに、前に教えたパウンドケーキまで。

 ろうそくは魔物の肉からできた油で作ってて臭いからなしだけど。

 灯りは特別に魔道具で用意してくれたから結構暗くなるまでどんちゃん騒ぎしてた。

 僕はお酒も飲めないし適当なところで二階の部屋に戻っていいぞって帰されたけど、多分ガザシさんたちは朝まで酒盛りしてたよねあれは。

 で、僕は久しぶりに一人の時間だった。

 日本にいたときはしょっちゅう一人でいたもんだけどね。

 こっちの世界に来てからはせいぜい三ヶ月くらいなんだけどなんだかんだ誰かといることが多かったな。

 こんなに大勢でお祝いされたのも初めてで。

 嬉しかったと同時に少しだけ寂しさもあった。


 で、ちょっとガラケーを開いてみたら着信が二件あって驚いた。

 お母さんから誕生日おめでとうのメッセージと三角のパーティーハットをのせたナツコの陽気な写真。

『P.S.恋人ができたら報告くらいはしなさい。』という言葉にカインさんの顔が浮かんで慌てて打ち消した。

 僕はノーマルだし、カインさんは護衛ずっとしてくれるみたいなこと言ってたけどあんなかっこいい人には僕みたいな平凡じゃなくて美女とか美少女とかもっと相応しい人が………。

 僕はぶるぶると頭を振って次のメールを見る。

 それに、神様からのおたおめメール。

 思わず二度見したよ!?


『やあ、我、神さま!今日君の誕生日なんだよね?゙(pq´∀`)┌iiiiii┐(´∀`pq)゚゚おめでとう~!こちらの世界では成人になるね。お祝いと言ってはなんだけどひとつ良いものを贈るよ。君の亜空間収納に放り込んでおくので後で確認してね。また連絡する…いやむしろちょくちょく連絡しろくださいお願いします暇で暇でまた寝ちゃいそうなんでテヘペロ(^ー^)ノまたね』


 えー…。

 あの神さまフランク過ぎない?

 でもまた居眠りして時空間に穴を開けられたら大事だしたまにはメールするか。

 それにしてもプレゼントくれたんだ。何が入ってるんだろー?

 おもむろに僕は亜空間収納のバッグに手を突っ込んで探る。

 見つけた神さまの贈り物はかっこいい銀のペンダントだった。

 ゴシックっぽい翼がトップになってるんだけど、こう…重なる二対の羽の曲線がハートを描いてる。

 ペンダントが入ってた箱には説明書もついてて、一度だけ危機を救ってくれると書いてあった。

 すごい貴重なものなんじゃ…初めて会った時に言ってたおまけってこれなのかな?

 ありがとう神さま、大事にします!

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