第69話 王都の魔法使い。
この世界に来て初めて自分以外のうねるような魔力の動きを感じた。
街の住民の魔法はささやかなのでうねりを感じることはなかったんだ。
デリカネーヤさんが構えた杖に集まっていく魔力大きく、はっきり感じる。
よく見るとなんとなく緑に光って見えている。
淡く美しい光が杖全体を取り巻きひゅるひゅると回転している。
まるで小さな竜巻のように。
「…『我 望む 切り裂く力 魔力の理 …
杖を薙ぐように動かし発された呪文によって魔力の風が竜巻から筋状に飛び出し、群生の一部を切り裂いた。
シャキシャキーン!どどっ
すっぱりと断ち伐られたドライアドたちは一定方向に揃って倒れる。
見事な切れ具合に洗練された魔法ってこういうのか、と思わず拍手した。
「凄いです!さすが王都の魔法部隊長さんですね」
「いえ、私などまだまだ」
謙遜するデリカネーヤさんだけど整然とした魔力の流れを感じ、僕が使った魔拳銃の魔力を思い出すとその雑さが比べ物になら無いと思う。
やっぱりとても魔力操作がうまいってことなんだろうな………はっ!
「そうだ!デリカネーヤさんに魔法を習えばお風呂が一日おきに!」
「…はい?」
「お願いしますデリカネーヤさん!僕に魔力操作を教えてくださいっ」
いきなり頼み込み始める僕にカインさんは慌てて止めようとした。
「ちょっと待…!」
だけど構わず僕はデリカネーヤさんに頭を下げ続けた。
だってきっとこの瞬間を逃しちゃいけないってナニかが囁いてる。
勘なのか霊的なシックスセン○かはわからないけどとにかく、チャンスの神様には前髪しかないって聞いたし!
「………」
しばらく沈黙して、デリカネーヤさんは詳しく聞きましょうといってくれた。
承諾はもらえてないけど拒否されてもいない。
言えない事情もあるけど真剣にお願いしようと思った。
街の人も魔法は使えるけど人に教える事が出来る人は居なくて、魔力操作の勉強は進んでなかった。
なんとなくのぼんやりしたイメージだけでやってるから細かい…精密操作?みたいなのはよくわからないらしい。
日本での僕が知ってる知識内のことならはっきり思い浮かべられるんだけど。
そのせいか、ずっとお風呂は三日に一度なんだよー!
動機はちょっとよこしまだけど、暴走したりしないように必要なことだからね!←重要
ひとまずの伐採を終えて街に戻ると話をするために自警団寮へと移動した。
もちろん本部で引き継ぎをしてからですよ。
私的用件だしもしかしたら他に漏らせない話になる可能性もあるので、個室へ案内する。
下の厨房で用意してきたお水を小さな机に置くとデリカネーヤさんの前に座る。
ここにはワンセットしかない椅子に僕とカインさんの分を運んできて二人並んでデリカネーヤさんの対面である。
「では、何故魔力操作を学びたいのかお聞かせ願えますか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます