第63話 大工さんすごい!
おやつと夕食をみんなで食べて数日後。
街の見回りをした後で川の支流を街に引き込む工事のお手伝いに向かうことにした。
言い出しっぺですからね。
僕でもできる雑用を頑張ります!
現在の街は南半分が消し飛んで更地状態です。ごめんなさい!
北半分に教会、自警団本部、自警団寮、猫飯屋等があり、更に北上した最端部に川の支流の先っちょが引っ掛かっているような感じ。
今は街にいた大工さんが測量とかをしてると思うんだけど。
カインさんと歩いていると人が集まっているのが見えてきた。
「あれかな、こんにちはー!」
「うん?おお、自警団の新入りかあ」
「雑用でも手伝わせてください!」
「手伝いかあ?うーんじゃ、掘り出した土でもそっちに避けてくれるかあ」
手で示された方に目を向けると小山を作る土がある。
これを邪魔にならないように移動するってことか。
「わかりました!」
「よろしくなあ」
カインさんと土の山の方に向かうと捨てる場所を確認して置いてあったシャベルを借りて移動を始めた。
「よいしょっ、と」
「よ、っ」
二人で協力して捨て場へ土を入れていく。
ある程度退けると額の汗を拭ってふうと息を吐いた。
何気なく振り返ると大工さんが…大工、さん?
支流の先からずらりと並んだおじさんたち。
みんな一様に両手のひらを地面に向けて目を閉じている。
集中している緊張感で思わずこちらも息をひそめてしまった。
「…っ、?」
やがて彼らの手がほんのりと光だす。
ズ…ズズ…
微かに地が揺れたかと思うと。
ズ、ズズ…ズン!
地鳴りがしてドパッと土が飛び上がった。
「のわあっ!?」
一気に溝が掘られたように飛んだ土はさっきシャベルで動かした山みたいに大工さんたちの後ろに積み上がる。
「………ッはあ!はあ!あ、後は頼んだあ!」
土を動かした大工さんたちが疲労困憊といった様子で座り込むとまた別のおじさんたちがずらりと並んだ。
「おうよ!」
彼らもまた両手のひらを突き出してたった今掘られた溝の側面に向け集中する。
あれは、魔力の発動だったんだ。
しばらくして彼らの手が光ると粗削りだった面が整地されたようにきれいになった。
そこへ支流の水が流れ込んでいく。
「…ィよっし!できた、はぁ…!」
水の流れるのを見届けると同じように疲れ果て座り込んだ。
一人一人分担して魔法で河川工事をやり遂げた大工さんたちはすぐに立ち上がれないほど疲れた様子だけど、晴れ晴れした笑顔を浮かべていた。
僕もあんな風に仕事ができたらいいな。
今の僕にできるのはこの掘られた土を退けるくらいだけど。
「カインさん…」
「うん?」
「頑張りますか!」
「…ふふ、そうだね。頑張ろっか!」
今は新人だけど与えられた仕事を一つずつ丁寧にやっていこう。
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