第62話 れっつくっきんぐ!

 まずとれたての新鮮な魔物(鳥形)の肉を用意。

 ももの肉または胸の肉を使います。

 解体はカインさんにお願いしました。

 これに街の料理人マオさんに分けてもらったマスタード(真っ赤だけどマスタード)と塩、これまたとってきたばかりの白蜂蜜を揉み込んでおきます。

 本当は一晩くらい漬け込みたいけど腹ペコなので今回は省略。

 二十分くらいあれば良いかな?

 その間にデザートを作ろう。


 帰りに見つけた謎のシマシマ卵(多分鳥形魔物)にまたまたマオさんに分けてもらった謎の乳(羊型魔物だった)をよーく混ぜる。

 そこに白蜂蜜を入れて更に混ぜる。

 濾し器で濾すとかした方がいいけど今無いからきれいな布を鍋に敷き、そこに混ぜたものを入れて布目を通すように搾る。

 これを加熱してゆっくり混ぜふつふつと細かい泡が鍋肌に出てきたら火を止めて食器に移す。

 せいろ…は無かったから大きな鍋にお湯を張ってそこにプリンを並べて。

 後は蒸せば蒸しプリンの出来上がり!

 冷やしても美味しいけどここじゃ無理だからねー。


 さて今度は蒸す間に漬けておいた鶏肉を焼きにかかる。

 平鍋に油をひいて皮を下にして焼き始める。

 先にじっくり皮を焼いてカリッとさせたいんだ。

 きつね色になっていい具合のパリパリ感が出たところでひっくり返し、今度は焼きすぎに注意して火を通す。

 少し押して出てくる肉汁が透明になればいい頃合い。

 一つだけ失敬していてみる。ん、よし。

 欠片を口に放り込めば溢れる甘辛さに思わずガッツポーズ!

 残念ながら醤油がなかったので塩だけど、うまっ。

 うんうん頷いて味わってたら肩をつつかれた。

 マオさんもカインさんもガザシさんも注目する目はそんなに旨いかと語っている。

 口を開かず出来上がったハニーマスタードチキンたちを大皿にたっぷり盛って手のひらを示す。

 どうぞ!


「じゃあ…むぐ、む、…!?」

「「「旨い!」」」

「なんだこの味…甘い、辛い、…旨い…」

「美味しいですね。これは王都でも好まれるのでは?」

 口々に誉められて照れる。

 思わずはにかみ笑いを浮かべてしまう。

「…君、料理も上手なんだね」

「いえ普通ですよ。素材がいいんですから。あ、そろそろプリンもできるのでどうぞ!」


 蒸し上がったプリンを熱くないよう布で包んで渡す。

「どれどれ、はむ、む…ほんのりと…これが甘味?」

「ほっこりして、…なんとも言えぬ幸福感がありますね」

「…これはちょっと、その…」

 カインさんは口元を押さえて口ごもる。

「ああ、カインさんは苦手みたいですね?」

「っいや、だ大丈夫だよ!」

「無理しなくていいんですよ。僕、甘いのが苦手な人もいるって言いましたよね?…今度もっと甘さを控えたの作ってみますね」

 無理して食べようとするカインさんを止めてそう言うと必死の形相から笑顔に変わってホッとした。

「…ありがとう。次を楽しみにしてるよ」

「はい」

 ハニーマスタードチキンの方は平気そうだったし甘味そのものが強いのは好みじゃないんだろうな。

 ほろ苦いカラメルソースができれば良かったけど、蜂蜜ではうまく作れなかったんだよね。

 一人だけ無しってのも仲間はずれみたいで寂しいし、苦手なカインさんも食べれるように工夫してみよう。

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