第64話 りゆーす。

 大工さんの人海戦術工事のお陰で街中に川を引き込むことができた。

 通路の大部分は木造で純粋な人力が殆どで、魔法は使われなかったけど橋も架かった。

 次はお風呂を…と行きたいけどその前に。


「排水の再利用?」

「はい!もったいないと思うんですよね。ここでは科学薬品なんて使われてないんだし畑とかに撒くようにすればエコじゃないかと」

 トイレをいたした後で流すのに使うってのもあるけどこれからできる予定のお風呂の排水は大量に出るのだ。

 排水の道路と言うか下水管のようなものは後で設置するとして、先に畑を作ることにする。

「か、がく?えこ…?」

「あ、と、とにかく無駄にしないってことで!」

 ちょっと気になってたんだよねー。

 ここは海が遠いらしくて魚は別の町から取り寄せ、メインは魔物肉、野菜は…僕の魔法で消失。ホントスンマセンッ!

 なので、野菜畑を作りたいと思います。


 空き地はたくさん(…)あるのでそこに山からとってきた土を混ぜて耕す。

 多分山の土なら養分を含んでると思ったから、ざっくり集めといたのだよ。

 亜空間収納ってホント便利だよね。

 堆肥とか肥料が作れたらもっといいのだろうけど僕にそこら辺の知識はない。

 人糞なんかを使うとか聞いたことはあっても詳しくはわからないし、相当臭いとも聞いたし。

「これを混ぜたらいいの?」

「はい!」

 教会近くの空き地でカインさんと僕で鍬を使って混ぜながら土を盛り上げて畝を作る。

 他の場所は農家さんがやってくれてるはず。

 手分けして数種類の畑を作ってく予定だ。


 けど。

 ………………しんどい。

 鍬だけだったらそこまで重くないんだけど、土の重さが加わったら…。

 何回も繰り返すうちに汗が垂れてきた。

「…っ、はあ」

 汗を腕で拭って立てた鍬を支えに一息吐くとカインさんを見やる。

「ふっ」

 ザクッザクッとテンポ良く土を起こしている。

 鍬を振り上げる度にシャツをまくった腕の筋が浮き上がるのがカッコいい。

 そっと腕を曲げて見るけど僕は力こぶなんか出ない。

 こっそりがっくりしたのはここだけの秘密にしてください。


「ふぅ…こんなもんかな?どう?」

「は、はい。バッチリです!後は種を撒いて」

 農家さんが大事に保管していたものを丁寧に撒いてふんわり土をかけていく。

「…ちゃんと美味しく育っておくれー」

 ナムナムと手を合わせる。

 ふと横を見たら見よう見まねでカインさんも手を合わせていた。

 イケメンは何をしてもカッコいいけどなんかこうこれは、キュンとした。

「…これでいいのかな?…ん?」

「あ、いえ、大丈夫でっす!」

 目が合いそうになって慌ててそっぽを向く。

 な、なんでこんな恥ずかしいのー!?

 直視しないようにカインさんをチラチラうかがうとショックを受けたように固まってた。

 あれ?なんでだろ?

 少し経ったら元のように動いてたからいいか。

 とにかく、どぎまぎしつつもとりあえず今日は川から汲んだ水で水撒きもして畑仕事を終え、土だらけの体にクリーンをかけて自警団の寮に帰った。

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