第55話 お風呂革命だ!
「先頭?」
だから違うって。
「いや銭湯、銭湯です!」
「セントウ…?」
発音が外国人みたいになったよ。
あれ?自動翻訳ついてる感じだったのに片言になるってことは銭湯は
ガーーーーーン
「ちょ…!?」
「おいおい大丈夫か坊主?」
ショックでふらっとよろめいた僕を二人が支えてくれる。
ガッチリした筋肉が本当に頼りになります。
「はぅ…な、なんとか」
「ガザシその辺で休ませよう」
「そうだな。ここのベッドを使えばいい。ちょっと待ってろよ今水持ってくる」
「ありがとうございま、」
って水、?そういえば水の供給ってどうなって…?
「あの、カインさん?いつも水はどこから」
「ん?近くの川から汲んでくるか、水属性の魔法適性が有れば魔法で出すか…まあ魔力に限りがあるから大抵は汲んでくるのが多いな」
「じゃあガザシさんは…」
「川に水汲みに行った筈だよ。それがどうかしたかい?」
「いえ…」
わざわざ川まで行くのか。
宿ではいつも甕に汲んであるのを使うだけだったけど、あれも宿の従業員さんがやってくれてたんだ。
見回りで回りを歩いたとき確か街の入り口の門と反対方向に横切るように流れる川があったっけ。
細い支流が街に向かって流れていたからあの辺から汲んでくるんだろう。
また手間をかけさせちゃった。
………お礼代わりに(プラス僕がお風呂にはいるため)、水の供給を安定させたいな。
近くまでは支流となる小川があったんだからそれを河川工事して街に引き込めれば汲むのももう少し楽になるはずだよね。
水道についてわかんないけど、この世界には魔法があるんだからなんとかできないかな…。
……は!むしろ僕がチートだった!
イメージできれば使える感覚はあるんだ。
延々水を生み出すのはとんでもなく効率が悪いからそれは河川工事でいいとして、加熱はまた魔法でやれば…イケル!
「いやいや無茶だよ!」
「でもお風呂入りたいんです!毎日!」
「いくらなんでも毎日は無理だろー。貴族か!」
「ガザシ!」「ガザシさん!」
お風呂熱望!と訴えてカインさんと言い合いしてたら樽入りの水を抱えたガザシさんがツッコミいれてた。
「…というわけで、僕の魔法でお湯にすればお風呂に入れると思うんです!」
戻ってきたガザシさんに今考えたことをそのまま言うとまたカインさんに止められる。
「君の魔力が大量なのはわかるけど毎日そんなたくさんのお湯を沸かしていたら、また魔力が枯渇するかもしれないだろ!?」
「でも!」
心配してくれるのはありがたいけど思い付いたことに興奮して言い返そうとしたら、まあまあとガザシさんが割って入る。
「あーこらこら二人ともちょっと落ち着け。つまり坊主は風呂に入りたい。カインは魔力枯渇が心配だと」
「はい」「ああ」
僕たちの意向を確認したガザシさんは少し考えてから告げた。
「うーむ、ならこうしたらどうだ?三日ごとに湯を沸かす。最低三日は休みにする」
「ガザシ!」「ガザシさん!」
喜ぶべきか落胆するべきか悩む中途半端な意見に口を尖らせる。
カインさんも困惑したような声で、ガザシさんは苦笑して続けた。
「坊主が魔力枯渇になって回復するまで三日はかかるだろ?あの
質問の意図を図りかねて首をかしげる。
「多分8割くらいの出力だったと思いますけど…」
いっぱいいっぱいで必死だったけどその後ガザシさんに治癒魔法を使ってから倒れたから多分それくらい。
ガザシさんは僕の答えに頷いて条件を提示してきた。
「今度の対象は水だ。多いとはいえ倒さなきゃこっちが死ぬような相手じゃねえ。加減を覚えろ。それができたら一日おき許可するってことでどうだ?カイン」
「…それなら、考慮する」
「むー…わかりました。僕もまた破壊するのは嫌ですし」
不満はなくはないけど、とても妥当と思える条件だ。
カインさんも納得したようで渋々だけど頷いている。
魔法は使いたいけど暴走させて破壊工作がしたい訳じゃないもの。
思い通りに使えるのが楽しいのだ。
そのために必要なら頑張ろう。
しかしついでとばかり言葉の勉強まで課されてヒキガエルのように呻くはめになるとは思ってなかった。
忘れてた宿題を思い出して慌てた夏休みが懐かしいよ…。
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