平凡なのに魔法使いですみません！！

第54話 突撃！お宅拝見～。

「…はい？」

「自警団宿舎だ！」

　あえて言おう。その台詞は二度目であると！

　…いやいや、さっぱりわからないよ！？

「…つまり？」

「これからはここで生活しろ。宿にはもっと一般市民が泊まれるようにしないとだろ？」

　成る程納得。

　しかも一人一部屋になるそうな。

　この前話したときにカインさんのところにお邪魔しているので申し訳なく思っていることをぽろっともらしていたせいか。

　こんな大事になるなんてさらに迷惑をかけたのじゃあるまいか。

「あの、」

「「迷惑じゃない」」

「えっ」

　心を読んだのかというタイミングで同音異口に言われて瞬く。

「やっぱりそう思ってたな？これは俺がやりたくてやったんだからな」

「そうだよ、ガザシが勝手にやったんだから気にしちゃダメだよ？」

　詰め寄るように二人に説得されて驚いたけどその気遣いに笑みがこぼれた。

「そうやって笑ってるのが一番、可愛いんだから…」

「じゃー中見てみるかな、行こうぜ坊主！」

「はい！」

　ガザシさんに遮られたカインさんがちょっと肩を落としてたけど、僕は気付かずにガザシさんの先導について自警団宿舎へと足を踏み出していた。

　自警団本部の裏手に建った宿舎は本部と同じくらいの二階建てだった。

　広めの玄関を入ると右手奥まったところにロッカーのようなものがある。

　鍵つきで個人の装備などを入れておくらしい。

　見回りの時などすぐに支度できるように備えるのだとガザシさんが胸を張っていた。

　左手には洗面用の水甕、トイレは共同になるようで一応複数作られている。

　玄関からまっすぐ突き当たりは会議室兼食堂になる広間。

　給湯厨房はこじんまりと広間の左隅に設置してあった。

　その隣と足元に食糧庫収納、そのまた隣に階段が二階へと螺旋を描いている。

　階段を上ると二階はずらりと個室が並ぶ。

　室内はほとんど宿と変わらないものだった。

　トイレはないがささやかに洗面用の水甕がある。

　あと小さな机、クローゼット、ベッド。

　ここにも風呂はないようだ。

　つい溜め息を吐いてしまうがもとの世界で風呂好きだったわけでもないしクリーンの魔法も使えるのだが。

　これは日本人ならではだろうか？

　一週間も風呂に入れないとやはり恋しくなってしまう。

「…はぁ」

「どうしたの？」

　耳に入ってしまったらしく正直に言うとカインさんに苦笑された。

「それは…仕方がないかもね。湯に浸かるなんて普通の平民にはできないことだよ」

「うーん、だなぁ。坊主は生活魔法でクリーンもできんだろ？」

「そうなんですけど、やっぱりお湯に浸かるのと比べると全然物足りないんですよ…」

　文化の違いっていうより身分の違いの方が大きいのか。

　貴族のお風呂を一般にぶっ込むのってどうすればいいんだ？

　腕を組んで首を捻る。

　現代日本で当たり前の各家庭のお風呂っていうのは無理だよね。

　もっと大衆に………………、って！？

「そうか、公衆浴場！銭湯だ！」

「せ、戦闘？」

いや違うし。