第51話 お説教は耳に痛い。

 熊栗鼠くまりすを十数頭狩って帰った後街の中を見回り、自警団本部で報告書を書いて提出すればその日の仕事は終了だった。

 ゾンビ化した魔物って見た目アレだけど味は美味しいらしいので夕飯は期待したい。

 解体は…カインさんにお願いしたけどね。

 魔法で手伝えるとこはやろうと思ったんだけど、できたのは血抜きだけだったよ…。

 さすがに初狩りでいきなりは無理でしたorz

 いつかは慣れないとこの先やっていけないよね。

 今すぐは無理でも乗り越えるためには挑戦だ!

 美味しい食生活のために!


 報告書はカインさんとガザシさんに見てもらいながら書きました。

 何度か書き直して承認の判子をもらったときは達成感があったなぁ。

 その後は自由に休んでいいとガザシさんが言ってたので炊き出しのお手伝いの方に行ってみることに。

 食事どころの店が結構壊れていたので残った設備を持ちより青空食堂になっているんだ。

 宿泊は残ってる宿は半額、あぶれた人は教会に泊まることになってる。

 幸いカインさんの定宿は無事だったので今日からはまたそっちに泊まる予定。


「マオさん!」

 恰幅の良い猫耳おじさんを発見して思わず声をかける。

「ありゃ新規の坊主じゃないか。お前さんも無事だったんだな。あんだけでかい魔物が暴れた割りに怪我人だけで済んで助かったぜ」

「っすよね!お陰で今日も旨い飯が食えらあ!」

 大笑いしている猫飯屋の面々に僕も顔が緩んだ。

 残念ながらお店は厨房以外壊滅状態らしいが商売道具は無事だったと喜んでいる。

 炊き出しはマオさんが取り仕切っているようだ。

「じゃあ、追加の食材を…」

「持ってくるんで、ちょっと待っててください親っさん!ね?」

「あ、はい」

 亜空間収納から直接取り出そうとしたらガッと手首を捕まれカインさんに連行されてしまった。


「…やっぱり君は放っておけないね…」

「あぅ」

「伝説級魔法なんだからそこらでホイホイ使わない!」

「あいっ!」

 建物の影に入ったらお説教でした。

「治癒魔法をあれだけ使えるだけでも危険が付きまとうんだからそんなに簡単に大勢の前で使っちゃダメだよ、わかった?」

「うっ…、わかりました。出すときは一部にして多いときは別の場所で出してからにします」

 教えられたことをもう一度なぞるように口にすると良しと頷いてくれた。

 マオさんはいい人なのになぁ。


 ちょっと不貞腐れてしまったのがわかったらしくカインさんが苦笑を漏らす。

「マオの親っさんがいい人なのはわかってる。けどちゃんと周りを見て考えて行動しないとその人に迷惑がかかるんだから…我慢も覚えないと、結局は上手くいかなくなるよ」

 前半は確かに僕に言い聞かせていたけど後半の言葉は自嘲を含んで聞こえた。

「カインさん…?」

「あ、それじゃあここで一頭出していこうか」

「…はい」

 疑問は流されたけど、いつかもっと周囲への配慮っていうのが身に付いたら聞かせてもらえるだろうか。

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