第48話 初任務は初めてのおつかい。

「ところで俺も自警団入るからね」

「…はい?」

 唐突なカインさんの宣言に驚いているとガザシさんも怪訝そうな声を出すけどすぐに得心したように頷く。

「あん?何回誘ってもやらねえって言ってたのに…ははぁ成る程。若いねえ」

「は?え?何…?」

 訳がわからずおろおろしてガザシさんを見るとカインさんに目隠しされて抱き寄せられた。

 捕獲するの止めてもらえませんか。

「気にしなくて良いから。それよりガザシ、この子と俺ペアで見回るから」

「あ?それじゃパワーバランスが…」

「じゃないと自警団入らせないからな」

「なんでカインが、あーいやいやわかったからそう睨むんじゃねえよ。見回りはいいが条件がある」

「…仕方がないな」

 と、頭上でさっさと話はまとめられ現在に至る。


 心配性なカインさんと常にペアを組む代わり、たまに魔物討伐などにも出ることになっていた。

 大物はそうでないけど逆に言えば小物はそこそこいるわけで、数日おきに遠征する必要があるのだ。

 で、僕という魔力バカとカインさんという実力ある剣士ならいいだろってことになったみたい。

「…本当は街の外なんか出したくないが俺が今度こそきっちり守れば…」

 カインさんはちょっと不満そうだったけど、僕は初めて見る街の外にドキドキしてる。

 だって異世界に来て初めてだから!

 いきなり旅とかは無茶だと思うけど遠征って言っても街からそこまで遠くじゃないし、こないだと違ってカインさんもいるから安心感がある。

 なので僕はそれほど怖がらずおつかい気分で歩いてる。


「…こら、そんなに離れない。君は俺の隣か後ろにいなさい」

「う…、はぁい」

 カインさんが過保護になってる気がするけどね。

 属性のこともガザシさんに言うなと釘を刺されたので光属性と生活魔法だけ使えることになってる。

 ガザシさんはいい人だと思うけど、うっかりどこかで話したら僕を狙う誰かにガザシさんも害されかねないんだって。

 そこまで考えられるカインさんすごいなあって思ったよ。

 だけどホントにそういうのは気を付けなくちゃ。

 お世話になったのに恩を仇で返すような真似はしたくないもんね。


 今日は復興途中の街をさらっと見回り、また大物がいないかと食料確保もかねて少し街から出て外周を一回りするだけの予定なんだけど。

 あんな大きな蜥蜴のゾンビ出たらホント困るよ…。

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