第36話 平凡がやるとコスプレ紛いで恥ずかしい!

 手に取ったのはチャイナカラーの白いシャツに茶色の乗馬用みたいな太股が幅広で膝下が細いズボン。

 セットでサスペンダーがついているものだった。

 走ったりしても乱れず動きやすいためだろう。

 この上にローブとかを羽織ればいいんじゃないだろうか。

 魔法チートっぽいものはあるんだし、魔法使いのコスプレみたいな?

 ふふふと含み笑いをしてしまう。

 ちょっと恥ずかしいけどやっぱり憧れがあったので嬉しい。

「決まった?」

「はい、とりあえず今着てみたのは気に入ったので似たようなのを何枚か色違いで買おうかと思います」

「うん、いいね。似合ってるよ。じゃあローブとか見ようか」

 さらっと笑顔で誉められて一瞬呆気にとられた。

 さりげなく赤くなった顔を隠しながらうなずいて移動する。

 だってさらっと、さらっと言うけどカインさんて!

 僕も男なのに…イケメンに嫌味なく誉められて、やっぱり恥ずかしい!


「このローブ厚手で変温に強いんだ」

「変温に?」

「あとちょっと物理防御を上げてあるらしい」

 カインさんも使ってるらしいローブを肩にかけて色を見る。

 店内に鏡はなかったから自分の感覚かカインさんの目が頼りだ。

「…どう、ですか?」

「肌の色に合うのはこの、茶系か。好きな色はあるかい?」

「えーと」

 聞かれて考えるけどローブの色って派手なのは不味いんじゃないかな。

 それに今かけてるローブが買う予定の服にもあっていると思ったので、これで決定にした。


 会計を済ませると一着は着たまま、他の服は適当な麻袋に入れてもらって店を出た。

「結構買ったから一度宿に戻ろうか」

「はい!…あ」

 荷物が増えたので戻るのは賛成なのだけど、忘れかけていたことを思い出した。

 急に大声を出した僕にカインさんは訝しげに首をかしげる。

「何か買い忘れた?」

「いえ、えっと戻ってからで大丈夫なんで」

「そうかい?じゃあ戻ろう。ああ袋は俺が持つから、ね」

 自然な流れのように荷物を持たれて遠慮する間もなかったよ。

 ああもうカインさんがマジイケメンで爆破が足りんわ!



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