第37話 魔法を活用しよう!

 さて戻った僕たちは預けていた金庫を宿のご主人から受け取り部屋に入る。

 金庫はなんと魔法で個人認証がかかっているのだ。

 水回りがちょっと不便だったり鏡が一般的じゃなかったりするのに。

 宿屋とはどうやらこういった特殊な魔法適性でできる職業であるらしい。

 成る程だね。


 蝶番に手をかざすとふんわり光って鍵を開けられる。

 持ち主以外が開けようとすると痛みが走るらしい。

 静電気実験みたいな感じかな。

 中には質屋でもらったお金と、僕の大事な学ラン(亜空間ポケットにハンカチとガラケー入り)が入っている。


 それらを取り出していると後ろから眺めていたカインさんが声をかけてきた。

「…どうするつもりだ?まさか一人になる訳じゃないよね?」

 うっすら笑みを浮かべているのに背中が震える。

 な、なんで冷気背負ってるんですか!?

「違います、空間魔法でアイテムボックス…亜空間収納できたの思い出したんです」

「くうか…、収納?」

 怖い空気が消えてビックリしているカインさんにちょっとホッとする。

 逃げ出したいような気がしたけど逃げちゃダメな気もしたから。

 そう言えば亜空間ポケットのことは言ってなかったかもと思って説明したら納得してくれたみたい。


「…」

「じゃあとりあえず収納空間作っちゃいますね」

 宣言して目を閉じ今着てる服のポケットに亜空間を繋げるイメージをする。

 なんか一度作って使ったから前より繋ぎやすい?

 僕はスムーズに繋がったことをどこか第六感のような感覚で感知し、目を開いた。


 試しにハンカチを入れる。

 取り出す。

 うん普通に出し入れはできるな。

 次に学ランを入れる。

 袖から突っ込んでみると二センチくらい押し込んだところで残りがシュルっと入り込んだ。

 手をいれて引っ張ると同じく二センチくらい出したらシュルっと出てきた。

 ちょっと変な動きでびびったけどまあいっか。

 よし終わり、と目を向けたら目の前で見ていたカインさんは固まってた。

 僕が声をかけるまで微動だにしなかったけど、…問題なしだよね?

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