第35話 初期装備を手に入れよう。
朝食を済ませた僕らは街の入り口と中央の間くらいにある冒険者ご用達の店に来ている。
いきなり冒険に出る訳じゃないけど服を買わないとって話したらそれなりの備えはしておくもんだと言うカインさんに案内された。
「ここが防具屋。服屋も兼ねてるから」
「は、はい」
板張りの床がギシギシいってるけど普通の布の服に混じって金属の鎧も置かれていた。
床抜けたりしないのかな。
カインさんに付き合ってもらいながら物色していると店員らしきお兄さんが声をかけてきた。
「いらっしゃいませ。なにかご入り用で…ってカインかよ」
「カインかよとはご挨拶だな。今日は彼の防具メインなんだけどな」
苦笑してカインさんが答えるとようやく僕が視界に入って目を丸くしている。
背は高いけどなんだか表情が幼くて愛嬌のある人だな。
「あ、そうなんだ?こんにちはいらっしゃいませ。何をお探しかな?」
「えっと、こちらに着いたばかりで替えの服がないんです」
店員のお兄さんはかがんで目を会わせて丁寧に対応してくれる。
ちょっと子供扱いされてる気がするなと眉間にシワを寄せたくなるが我慢だ。
ここで反応するとからかわれそうだ。
「それと念のため防具も見繕っておきたいんだよ」
案の定付け足すように言ったカインさんを面白そうに見やっている。
きっとこのお兄さんは隙あらば人をからかって楽しむタイプだ。
「ふんふん、成る程。あのカインがねぇ」
「あん?」
「いえいえなんにも~?さ、こちらにどうぞー」
カインさんが横目でにらむとさらっと流して別の商品棚に案内されたけど、あのってなんだろ。
「君くらいならこの辺りが合うんじゃないかな。試着はここでできるから着てみてね。あと防具は…んーみたとこあんま重いのは向かなそうだしこの辺の、ローブとかどうかな」
棚にならんだ服は普通のシャツに見えるけど触ってみるとやはり粗目で日本で着ていたものよりごわごわしている。
まあ水準?相場?通りなのかもしれない。
「ありがとうございます。試着してみます」
「じゃあ決まったら呼んでくださいね」
店員のお兄さんが離れるとカインさんがいくつかの服を見せてきた。
肌触りはあまりよくないのに色は沢山あるなあ。
そう思って聞くとなんと染色は魔法でやっているらしい。
おとなしい種類の魔物の魔力を使って人が魔法で染める、というやり方だそうな。
危険も少なく無属性の魔法で抽出するので魔力量に余裕があれば比較的どんな人間でもできる、カインさんいわくオススメの職業のようだ。
安全性を最大に考えるなら無難なのだろう。
でも僕はそれじゃちょっと物足りないなーなんて考えながら、とりあえず一着着てみることにした。
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