第9話 お買い上げありがとうございます。

 真っ赤なペイントの看板が入り口脇に無造作に立て掛けてある。

「ここが買い取り屋…」

 すぐそばに門衛の詰所があるからかセキュリティなんか考えてなさそうな、簡易の掘っ立て小屋に見える。

 僕がぽけらっと見ているとお兄さんが苦笑した。

「ここの店は設備投資より護衛を雇う方に力を入れてるんだ」

「はぁ…」


「さあ入ろう」

 促されて入ってみると外観と違い内装は結構きれいだ。

 そしてお兄さんの言うように護衛らしき男性が二人左右の端に立っていた。

 お兄さんよりも頭一つ以上でかい。

 視線に気づいた男性の一人がグッと腕を曲げ力こぶを見せてくる。

 びくっとして後ずさると三人揃って笑われてしまった。

 僕なんて荒事なんて縁の無いしがない中坊ですからー!


「いらっしゃい、珍しいなカイン。直接買い取りかい?」

「いや、今日はこの子がね」

 奥から現れたのは丸眼鏡の壮年の男性だ。

 穏やかに尋ねる声にお兄さん、カインさんが答える。

 僕は慌ててペコリとお辞儀をした。

「あの、ちょっとそこで拾った石なんですけど、買い取りってしてもらえますか」

「は?拾ったって」

「…おやおや」

 ポケットから出した石を見せると二人は目を丸くする。

 すいませんショボい石で…でもこれしか手放せるものはないんです!

 拾い物ですが。


「驚いた。魔導石じゃないか」

「えっ?」

 魔導石ダッテー!?


 ………マドウセキって何ですか?

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