第8話 第一町人は。

 闇雲に探しても疲れるだけだろうと話しかけやすそうな通行人に思いきって声をかけてみる。


「あの、すいません」

「ん?」

 青い髪のお兄さんはすぐに立ち止まってくれた。

 はじめて接触した第一町人は、革鎧を着た世慣れた風な青年です。

 僕より頭ひとつくらい背が高く整った顔をしていらっしゃる。

 リア充め!


「えっとー買い取りをしているお店ってこの辺にありますか?」

「ああそれならそっちの赤い看板の店がそうだよ」

 気を取り直して聞いてみるとお兄さんは門のすぐ右手にある建物を指差し教えてくれる。

 て言うか…言葉通じるね。

 お兄さん白人っぽい肌の白さで髪も目も日本じゃあり得ない色なのに口から出てくるのは日本語?違和感半端ない。

 口の動きはちょっと違うみたいなんだけど…。

 これもチートか、ありがたい。

「ありがとうございました」

 お礼を言って早速店に向かうと、お兄さんがついて来た。


「…あの?何か?」

 今はじめて気がついたんだけど腰に下げた剣がちょっと怖い。

 銃刀法というものがあった日本で暮らしていた僕には縁遠い武器が、そこにある。

「うん。君この街初めてでしょ。素直そうで騙されやすそう」

「………う」

 クラスメイトにもよく言われる。

 実際危うく幸運の壺を買わされそうになったことがあった。

 暢気者だってお母さんにも呆れられたよ。

「だからさ、買い取り屋でも足元見られて買い叩かれそうだから、俺がついてってあげるよ」

「いいんですか?じゃあお願いします」

 実は不安だったのでほっとして頼むと一瞬きょとんとしてから、お兄さんもにっこり笑顔になった。

「いいよ。なら行こうか」




 ×××××



 お兄さんサイド


 可愛い子がキョロキョロしてるな、と思っていたら声をかけられた。

 真っ黒の髪に子犬のようなきれいな瞳の背の低い少年だ。

 買い取り屋に行くという。

 ふらふら向かう様子に不安を覚えて俺がついていくと言ったらあからさまに安堵を見せる。

 普通の平民ならここで俺を警戒すると思うんだけどね。

 見たこと無い服を着てるけど生地や縫製は良いもののようだし世間知らずに見える。

 顔立ちも悪くはないし、こんな子が侍従も護衛もなく一人でいるなんてどういう事情があるのだろうか。


 ゆきずりの関係しか持たず他人に興味もなかった俺が初めてもっと知りたいと思った。

 思えばこの時から恋に落ちていたのかもしれない。

 自分でその気持ちに気づくのはもう少し後の事になる。

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