第6話 移動開始。あっという間に。

 翌朝、起きると穴から這い出てうんと伸びをする。

 今日も青い空を見上げるとがある。

 だからちょっと別の場所に来ただけ、なんて期待しそうになる。

 だけど昨夜見た四つの月が嫌でもここはと解らせてくれた。

 納得できなくてもここは異世界。

 今の僕はチート。

 で、ここは荒野で誰もいない、と。

 死にたくない僕は食べ物が欲しい。

 生き物の気配もないからにはどこかに移動するしかないだろう。

 ここに来てまだ二日目。

 空腹で死ぬにはまだ早い。

 水なら魔法で出せるんだから少し頑張って歩いてみようと思う。

 意気地無しの僕でも何もない場所を歩くぐらいはできるさ。


 そう悲壮な決意をしたときが僕にもありました。

 それから五分。

 目の前に広がるのは喧騒溢れる発展した街。

 石畳だけどしっかり舗装された道に行き交う馬車と人々。

 え、さっきまでの僕の孤独っていったい…。

 みんなが見てる前で魔法をつかってはしゃいでいたというのか…?

 いやむしろ…あの開放的なひとときは…!?

 僕は恐ろしいことに思い当たりガクブルしていた。

 しかし。


「いらっしゃいいらっしゃい!こっちのビーツは新鮮だよ!」

「そこのおにーさん彼女にこの髪飾りなんかどうだい!?」


 誰も僕を気に留めてないみたいだ。

 ホッとしたけどちょっとむなしい。

 変態じゃないよ?うん。

 とにかくどこかで落ち着いて、ご飯食べたい。

 情報?その前にご飯でしょ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る