第5話 夜空の星はどこも同じ…?

 土の中はあんまり外の温度に左右されないって聞いたことがある。

 うろ覚えだから間違ってるかもしれないけど、ここでは有用だったようだ。

 暗くなって空気が冷えたからこそ穴の中の暖かさが身に染みるよ…。

 入り口を斜めに掘り、奥に丸くなって寝れるくらいのスペースを作った。

 横になると入り口から空が見える状態だ。

 今はうっすらかかった雲が流れて、月や星が見えている。

 天文とか別に詳しくないからわからないんだけど、不思議と星空は似たようなものだ。

 強い光と弱い光と色んな形に繋げば少ない知識から捻り出せる星座に、見えなくもない。と思う。


「まあ、月だけは明らか違うけどね…」


 見上げた空に浮かぶ月は…四つでした。

 それぞれ青、黄、紫、赤。

 色とりどりですな。

 遠い目になっていいすか?

 あの青い月は地球の宇宙から撮った写真に似てるんですけど。


 ほんのり疑っていたけど、やっぱりここは俺がいた地球ではないんだなあ。

 魔法が使えるとかおかしいもの。

 夜空の月が四つとかあり得ないもの。

 ヘタレでイタイ子が魔法使えるなんて、ねえ?

 勇者のなり損ないですよ?


 本当に異世界なんだ。


 僕はひとしきり泣いて、明け方ようやく少し、眠った。

 次に目が覚めたら今度こそ、移動を開始しなきゃ…まだ死にたくはないから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る