第7話:研修
夏の終わり頃に本社で研修が行われた。
私はそれに参加したのだが、周りの顔ぶれも入社式のままだろうか。
しかし実際には一癖も二癖も変わっている、オーラが増したような感じだ。
表情を見ればわかる。こいつは活躍しているなと。
私も負けじとオーラを出したいところではあるが、何百人といる中では一角に過ぎなかったのだ。
いつも通りの研修を終え、久々の本社の部長や課長と顔合わせをしたのだ。今夜は懇親会がある。それに私は出席した。
たまたまトイレで居合わせた課長は私の元チーフマネージャーだった人だ。今では本社でも活躍されていると話を聞く。
そこで私はお願いしたのだ。「何とか私を社長のところまで誘導してもらえませんか?ぜひとも今日はご挨拶したいのです」と伝えると、元上司である課長は「大島君、君は何を言っているんだ?君だけそんな特別扱いできるわけないだろう。自分の足で自分の力で社長の席までいきなさい」と笑いながら去った。
懇親会では課長と同席だったので丁度いいと思っていたがそうはうまくいかなかったのだ。とりあえずビールを1杯飲み、同期達と乾杯した。
楽しいひと時であるが私の目的は忘れたわけではない。
そんな時、あるグループ達が社長の元へ挨拶に行っていたのだ。
5~6人程か?明らかに別のテーブルの同期の者たちだとすぐに私は分かった。
遠くからでは何の話をしているのか分からないが目的は私と同じだろう。とにかく私は何としても掛け合いしたいと考えた。そんな時課長が「大島君、社長に掛け合うなら今がチャンスじゃないのか?あの団体に交じって後ろに並んでいたらいいのではないか?」とアドバイスしてくれた。
事前に人事部の課長にも打ち合わせをしていたが手間が省けたものだ。
これはチャンスだなと思い、私は後ろに並んだ。
前のグループの話が終わり、私の番が回った。私は知り合いの同期が特におらず、一人で挑んだ。しかしそこに社長が眼をとめてくれたのか、私の肩に手を回しながらこうおっしゃった。「大島君、久しぶりだね!入社式の時は君を血祭にあげて申し訳なかった」こうおっしゃった。
私は入社式の時に大きなポカをしてしまった。その際に社長からご指名が入り、その場でこっぴどく叱られた経験があるのだ。
私も「お久しぶりです。御社で働けること光栄に思います。」と伝えると嬉しげだ。私もその時のことを覚えていてくださっていたことにすごい嬉しさをこみ上げる。
周りのテーブルで同席している同期の者たちはみな口を開いてポカーンとしている。当然だろう、なぜこいつは社長とこんなに親しげなんだと思われていたからだ。
関わりこそほとんどないのだが、この日のことは今でも私は忘れていない。「今後の大島君の活躍には期待しているからね!」とおっしゃり、私は席を後にしたのだ。
それと同時にガッツポーズをして、店舗に戻るのが楽しみで仕方なかったのだ。
その日はホテルに泊まり、翌日バスに4時間揺られながら帰宅した。
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