第6話:夏休み

夏に入り、飲料や酒がよく売れる。

この時期は花火や炭などBBQのシーズンもありよく売れる。

もちろん虫よけもだ。小売業としては稼ぎ時でもある。

学生の頃はよく40日間毎日がほぼ休日だった。

しかし特に予定もなく、ただ時間だけが過ぎ去る日々、あの頃に投資をしておけば今頃資産もいくらになっていたことか。

そんなことを今さら考えても仕方がない、とにかく今自分が出来ることは少しでも早く作業を覚え、社会について学んでいく時であると感じた。

8月頃、両親が祖母を連れて私の店に訪れた。

久しぶりに会う気がするが、ちっとも変わらない。閉店後、自分のマンションに行き、近くのホテル13階屋上へと向かった。

そこでは既に酒を飲んでいい気分になっている父親と、元気に日本酒を飲む祖母の姿があった。楽しそうにしているではないか。

「卓郎、もう仕事には慣れたか?」と父親は言う。

「覚えることが多くて大変だ。仕事もなかなかうまくいかず、毎日怒られているよ。でも周りのサポートはすごく熱いよ」と私は言った。

「何事も石の上には三年だぞ」父親の決め台詞はいつもこれだ。仕事をする上でどんなにつらくてもまずは3年は勤めないといけない、そういう風習がいつしか我が家には根付いた。

夏が終える前に私は研修を受けなければいけないのだ。

本社に集まり、そこで久々に同期と集う。それまでの間に実力の差をどれだけ開けさせれるか。

私は当時完全なる実力主義だと考えていた。

しかし実際は違った。仕事が出来るということよりもむしろ、挨拶が出来る奴、気配りが出来る奴が仕事においてもすぐに役職も上がりやすいと聞いたのだ。

あまり勉強熱心でない私にも転機が向いてきたかもしれない。そう感じた。しかし労働は過酷。日に日にやめたいとも感じていた。

この頃はまだ私も将来がうまく思い描けていなかったのだ。

とにかく大学時代に習得したマーケティング理論と資金活用をいかし、どこまで節約できるかなどは考えていきたかったのだ。

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