semi-epilogue starting over
starting over
私は誰なのだろう。記憶の森を彷徨うが、乳白色の霧が掛かっていて何一つ思い出せない。
知識として、母の腕(かいな)のぬくもりと安心感、微笑むことの意味を知ってはいるが、このようにして魂の最奥に染みてゆくものだとは思いもしなかった。
「もう、大丈夫だからね、もう寂しい思いはさせないからね。ちゃんとお母さんがいるからね」
背中に感じるぬくもりが母の腕のその温度だと気付くのに幾分もかからなかった。乳白色のとろりとした気体が満ちた空間で、その温度だけが私の実在を確たるものにしてくれていた。
もう少し、もう少しだからと励まされながら、手放しそうになる意識を必死に揺り起こす。出口にたどり着けたら、自分の正体が少しだけ分かるかもしれない。
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