第15話

「そういえばさ、君が左手に持っているものがなにか聞いてもいいかな」

「は?これあんたのじゃねぇの?」

「間違いようもなく僕のものではないけれど」

「まじかよ。拾っちまったじゃんか」

「いや、知らないよ。先生に預けてきたらどうだい?」

「嫌だよ、面倒くせぇ」


 教室にかばんを取りに行く最中、彼の左手にもたれた黒い包みを聞いてみると、彼はぼくが落としたものだと思って拾ってきたらしいことが判明した。

 嫌そうに、汚いものでも持ったかのように人差し指と親指でつまみあげた彼は、何を思ったか、それをぼくの学生服の右ポケットに入れてきた。


「いや、いらないよ」

「受け取っとけって。俺からのプレゼント」

「こんなのいらないんだけど」


 そんな会話をしつつ、教室に入りかばんをとると前の扉から出て。


「じゃ、これで。また明日な」

「うん、また明日」


 思いっきり友達っぽい会話をして、ぼくと彼は2年3組の教室の前で別れた。それぞれかばんを持って、通学路に近い方の門に出るために別々の階段に向かう。

 先ほどまでいた友達。一緒に居るのと居ないのではこんなにも心持ちというかすきまというか、寂しいと言うのかな?そんな気持ちになるだなんて初めて知った。


 下校時間を過ぎているためか、人っ子一人いない、暗い廊下を進む。そういえば、魔女のうわさについてもう少し知りたかったな。どのくらいの時期から出始めたのかとか。自分でも調べてみるけれど、きっと昨日以上の収穫は見込めないだろう。

 

 彼は知っているだろうかと考えるが、普段の態度から考えて絶対他のクラスメイトと交流などなさそうだと思い候補からはずす。足を止めて、片瀬に玉葛友菊についての情報を求める旨のメールを送信すると、それをバッグの中にいれ、また歩き出す。1人意味もなく頷きながら、こつこつと暗い廊下に靴音を響かせて進む。そして衣ずれの音。ずるりずるりと。


 階段まで差し掛かった時、疑問が頭をよぎる。

ぼくはそんなに衣ずれが起きるような服装をしているだろうか? そしてなんとなく振り返ったぼくが見たのは、黒いローブといってもいい。布を被った小柄な人だった。


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