15話 - 新しい朝が来た -
知らない天井だ……ってどこ発祥だったかなぁ。逃げちゃだめなアニメだったっけ、とぼんやり思いながら私の朝は始まった。ベッド脇のテーブルの
「起こしてくれてありがとうございます。
「礼はええて、魔王さん。これが仕事やから」
「でも、眠くないんですか? 夜ずっと見ててくれたんでしょ」
「魔王さんは気い遣いすぎや。全然眠くないで。ウチらは夜型やし昼間寝さしてもらうしな。それより、なんで
「あ、あの水着のお姉さんの夢は夢魔さんの仕業だったんですね。それよりも海が気になって泳いでしまいました」
ははははと天井に張り付いたコウモリの夢魔さんと私の笑い声が重なる。後から聞いた話しだと、夢魔さんの本当の姿は夜の街に居そうな豪華系のお姉さんだが、太陽が出ている間はコウモリじゃないと体力がジリジリ削られていくんだって。
夜に活動する魔族の人たちは、基本的に日中は動物などの姿を取ってるらしい。上位の人は体力いっぱいあるから日中でも耐え切れるみたいだけど、ヤセ我慢してるんだって思うと、実際に会ったときちょっと吹き出しそうで辛い。
夢魔さんは私が起きたというのを厨房へ伝えに、私は用意されていた黒いワイシャツと黒いチノパンに着替え、寝室の外で待ってたネロちゃんとビャンコちゃんと一緒に、昨晩ご飯を食べた部屋へと向う。
「「……まお様、よく眠れた?」」
「うん、以外とぐっすり眠れたよ! 疲れてたのかなー」
「「……今も疲れてる……?」」
「うーん……分からないけど、慣れたら疲れなくなるかもね。あと、二人が居ると癒されるよ」
「「……わ……私達で良いならいくらでも使って、まお様」」
「二人ともっ……!」
私の前を歩いてた二人の頭を撫でると、二人は足を止め、もじもじしながらくるりと体ごと向き直った。二人の可愛さに感極まって抱きしめてそのまま後頭部をくしゃっと撫で、可愛さ成分を補給する。あー新しい扉開きそう。
「魔王様、その辺で離してやってくださりませ。二人が蒸発しそうなくらい真っ赤でございまする」
扉が開き――開いたのは新しい扉ではなく、目の前の部屋の扉だった――中からイェレナさんが出てくる。いつの間にか目的地に着いていたようなので、仕方なしに二人を解放する。イェレナさんの言うとおり、耳まで赤くしてて可愛いさしかない。
「ごめんね、二人が可愛すぎてつい。また疲れたら(さっきみたいに)抱いていいかな?」
「「……! も、勿論、
「当たり前だよ! 酷いことなんてしないよ。さ、ご飯食べよう」
「……(天然でござりますね……)」
「イェレナさん、何か言った?」
「なんでもござりませんよ。ささ、魔王様。奥のお席へ」
「あ、朝ごはん何かなー!」
イェレナさんに促され、昨日と同じ一番奥のお誕生日席へと座った。次にイェレナさんが座り、ネロちゃんとビャンコちゃんが座り、魔包丁さんたちが料理を運んでくれた。
朝はいつも、白いパンとチーズ、茹でた卵、フルーツの盛り合わせ、軽いワインでさっと済ませるらしく、パンの籠とフルーツを盛った籠がテーブルの真ん中、私たちの目の前に置いてある。
「料理人達がそんなに懐いているのを初めて見ましたよ、魔王様」
「こ、これって懐いてるって言うんですか? ただ給仕してくれているだけじゃ……」
「いえ、パンが柔らかいものになって、フルーツも昨日魔王様が美味しいと言っていた物ばかりでござります。そもそもあの魔包丁が自ら奉仕する事が無いのでござります」
「「……まお様、優しいから。声、掛けて懐かれた」」
「昨日の晩御飯の時かな? こんなに至れり尽くせりで私の為って言うなら嬉しいよ。ありがとね、魔包丁さんと魔狗さん」
食べ終わって、部屋を後にする。私が見えなくなるまで料理人の二人はお辞儀をしていたそうだ。感謝の言葉や
「この後、9時まで謁見でござります。魔王様に挨拶に来たいという遠方の魔族達の相手したら、ダンジョンについてお勉強いたしまする」
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