14話 - 紅一点 - side:S
長い回廊のような場所を歩いてた。ゲームで見た色々な
何度か巨大な怪物を倒すと、今度は回廊から城へと場面が移る。人型の怪物達が敵対心をむき出しにして襲いかかるが、カウンターで一刀両断。光の様な粒子を残し消え去る。それを見た自分たちは口々にゲームなんだなと呟いて先に進む。
螺旋階段を登り、玉座の間らしき豪華な扉を開ける。その場所は入口から奥に向けて赤い絨毯が敷いてあった。そして壁や柱が金で出来ていて、柱の間には
一歩室内へ足を踏み入れると、一斉に白銀の全身鎧がこちらへ襲い来るが、賢者の全体攻撃で前一列を灰燼と帰す。そこへ聖騎士が素早い動きで敵の前線へと向かい、敵の意識を自分へと集中させる。その背後から聖女がエンチャントとデバフを施し、賢者が最後尾側から単体攻撃を連発させる。自分はあまりヘイトを稼がないよう、聖騎士の傍で剣と魔法を揮う。
程なくして白銀の全身鎧を掃討し尽くすと、先ほどは感じなかった禍々しい殺意を感じ、殺意の方へと視線をやる。視線の先、奥の方からサーっと冷気が降りてきて、まるで金縛りに会ったように、小指一本も動かせなくなる。つっと額から冷たい汗がこぼれ落ち、ゴクリと喉を鳴らし唾液を嚥下する。何時間も睨み合っていたような一瞬に殺意の主が立ちあがり、おもむろに自分たちの方へ手のひらを向けた。
気が付くと部屋の中腹まで進んでいたはずが、強い背中への衝撃と共に入口の壁に押し付けられていた。そして間近まで迫っていた殺意の主の顔は、自分の顔だった。
「勇者様、起きて下さいまし」
「……っん、あぁ。おはよう、デルフィーヌ」
「うなされていた様ですが、またあの幻ですか?」
「っ、そうだよ。何度見ても恐怖で動けなくなってしまう」
「あれは未来の一つであり、必ずそうなるという訳ではないので……その、あまり気にしない様に出来れば……いいのですけど……」
「すまない、君にそんな顔をさせて。さぁ、この話は止めだ。朝食の時間なんだろう?」
「はいっ! 本日は青兎のサンドイッチとアプレルサラダだそうですよ。
「あぁ、先に行っててくれ。どうせ私が
「わかりましたわ」
閉まる扉を見送り、昨日使った
* * *
気が付くと部屋の中腹まで進んでいたはずが、強い背中への衝撃と共に入口の壁に押し付けられていた。そして間近まで迫っていた殺意の主の顔は、自分の顔だった。自分に首を掴まれ、強い力で締めながら持ち上げられ、床へと叩きつけられた。
プツリとテレビの電源を切ったように映像が途切れる。先ほどの場面が嘘のように五体満足で冷たい床に寝転んでいた。起き上がり、周りを確認すると眼鏡の
「あ。俺は
「俺は
「……ねぇ、何で自己紹介してんの? 今、この状況、変だと思わないの? どう考えても拉致監禁じゃないか。こんなの許される訳がない! もし、この部屋を出たら殺されるとか考えないの?」
「あ。そっかァ、そりゃ考えても見なかったわ。完全に異世界転生ひゃっほーってなってたからなァ。ま。この展開だと俺らは城で勇者として召喚されて、魔王を倒してくれって言われるのがセオリーなんじゃねーのかなァ」
「何を言っているのか大半が理解できないが、殺す必要があれば誘拐した時点で殺しているだろう。あとは、拘束されていない。扉が閉まっていれば逃げ場はないが、見張りが来た時にでも隙を見て逃げだせばいいじゃないか。柔道六段の俺に任せとけ! こういうアクション映画はかなり見て来た方だ。安心しろ」
「安心出来ないよ! 二人ともばっかじゃないの!?」
「まぁまぁ、落ちつきな、よ……? え?」
「ん? どーしたの? もしかしてアレの日来ちゃったァ?」
「お前、
「アレって何です? 喉押さえてる様子からして喉の調子が悪くなる日……とかですか?」
「無知だなァ、少年」
「少年ではありません! 小林です。
「はいはいはいはい、分かったよ、悟クン」
「さて、落ちついた所で
「そうだなァ、俺は別にいいぜ」
「僕も色々腑に落ちない事だらけですが、
「だ、そうだぜ
僕は自分の出した声に驚き、喉を押さえて固まってしまった。そして、彼らの自分に対する呼称に再び驚き身体の異変に気付く。この声は、<彼女>の声だ。そして、恐らく身体は<彼女>のものだ。僕が彼女ということは、彼女は僕になっている可能性が高い。
心配してくれた彼らに大丈夫だと声を出そうとした瞬間、目の前の扉が開いた。
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