魔王の仕事

12話 - レッツ☆ダンジョン -

「私は総兄そうにぃで、たぶん総兄は私になってるんだ。

 だから、総兄を探しに行くよ。

 もちろん世界征服もついでにやるから外に出ていいかな?」

「御仕事をやっていただいた上でなら、問題ござりません。

 して、そのソウニィ様を探し当てたとして、その後は何をどうされるのでござりますか?」

「「……まお様、もとの姿に戻ったらまお様じゃなくなるの?」」


 3人ともOKだって、良かったー! ただ、総兄見つけても元に戻る手段が無いし、戻ったら魔王じゃなくなるかもしれない。 都合良くまた神様が出てきてくれるなんて事ないだろうし……。


「どんな姿をしていても、私は私だよ。

 魔王じゃなくなるかも知れないけど、総兄は素敵な人だから私よりちゃんと魔王としてるか「「まお様がいい!」」も……?」

「「……まお様じゃないと」」

「どうしたの2人とも?」


 急に駄々を捏ねるように、膨れた頬と濡れた蒼い瞳で見つめてくる魔人形リグドルの2人が微笑ましくて、私は目線を合わせるようしゃがんで頭を撫でてあげた。


「大丈夫、魔王じゃなくなっても2人と一緒に居るよ。それなら良いでしょ?」

「「……うん。まお様、わがまま言ってごめんなさい」」

「それでは、私も御一緒するでござりまする。

 不思議とほっとけない魔王様のサポートはお任せくださりませ!」


 2人は可愛く揃って深々とお辞儀をし、小さな声でありがとうと言ってくれた。なにこの可愛い子達は! 私の肩にポンと手を置いてにっこり笑ったイェレナさん、ちょっと褒め言葉じゃない気がするけど……嬉しかったので不問にしておきます。

 私たちの戦いはこれからよ!


「さて、魔王様。お仕事でござりますよ」

「りょーかい、イェレナさん」


 パンパンとイェレナさんが手を叩き、魔人形2人が所定の位置へ戻り、大きなタンス《鏡》は運び出されていった。私は玉座に座り直し、肘掛にもたれて頬杖を付き足を組む。


「魔王様、姿勢悪過ぎではござりませんか?」

「あ、ごめんなさい。魔王ってこういうイメージだったからつい。

 前の魔王ってどんな感じで座ってたの?」

「大柄な方でござりましたので……両肘をひじ掛けに置いていて、足を広げてどっしりと座ってござりました」

「あー、そっちのタイプかー。

 そのスタイルは総兄のイメージ今の私の外見だと多分似合わないから、似合うポーズをその内開発していきたいと思います!

 カッコいいポーズがあれば私に教えるように」


 ビシッと誰もいない空間に向けて指を刺すと、飾りのように並んでいた生きた鎧リビングアーマー達が一斉に腰の剣や持っていた槍を掲げて返事をしてくれた。

 この馬鹿な発言で後々<魔王様の格好良いポーズを考える会>による研究が進んでいくのはまた別の話。


「さて、魔王様。宜しいでござりましょうか?まずはダンジョンについて説明させていただきまする。スキルの<ダンジョンクリエイト>を使いまするので、まずは唱えてくださりませ」

「了解! ダンジョンクリエイト!!」

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