11話 - 鏡よ鏡よ鏡さん -

「失礼します!魔王様、御所望の鏡をお持ちしました!」


 丁度、確認し終わった所で巨人さんが大きなタンスを持って来た。その大きさは約3mくらいで、タンスの扉を開けると大きな姿見が出て来た。ステータスウィンドウを閉じて、玉座から下りる。なるべく自分の姿が見えないように視線を落としてゆっくりと鏡に向かう。

 目の前まで来て、意を決して顔を上げるとそこには私の姿があった。


「……あれ?イェレナさん、男の人ってこういう外見なんですか?」

「「……まお様、姿がなんで違うの?」」

「あ、やっぱり違うんだ。うーん、何でだろうね。

 私にも分からないけど、この世界に召喚される前の姿がこれだよ」

「魔王様、それは真実の鏡でござりますので、魂の姿が映し出されているのだと思いまする」

「真実の鏡?それって拡大されて見えるからメイクに便利っていうあの?」

「……恐らく違う物だと思いまするが、これは本当の姿を映し出す鏡と言われています。ですが、今まで実際の姿以外写しておりませんでした。

 ……やはり本物でござりましたね」


 本物でも偽物でもどっちでもいいから今の姿が見たいんだけど、という視線をマッチョさんに送っていると、リグドルの2人がマッチョさんの手をぐいぐいと引きながら可愛らしげに首をかしげた。


「「……れな、手鏡持ってないの?」」

「……! 手鏡、持ってました」

「……」

「「……」」

「申し訳ござりません……」


 イェレナさんがおずおずと腰に付けていた布袋マジックバッグからシンプルな手の平サイズの手鏡を取りだして頭を下げながら渡してくれた。


「こっちの鏡なら今の外見だね。……って、総兄そうにぃの顔じゃん」

「知っている方なのでござりますか?」

「えっと、召喚される前に一緒にいた人なんだ。

 実のお兄ちゃんじゃないけど、小さいころからいっぱい遊んでくれた人だよ!」

「「……まお様楽しそう」」

「思い出し笑いだよー。

 いや、それにしても総兄の顔か……って声もか! 何故気付かないんだ私!」


「「「……今さら(ですか)??」」」


 渡された鏡の中の顔はこの世界ノルドストレームに来る前に一緒に居た人であり、この世界に来てあまり時間は経ってないのに、ひどく懐かしいと思った姿だった。ただ、今のこの表情は見たことが無い……というか、ちょっとだけニヤニヤしてる総兄は格好良くないなと、顔を引き締める。よし、格好良いぞ。


「私は総兄で、たぶん総兄は私になってるんだ。

 だから、総兄を探しに行くよ。

 もちろん世界征服もついでにやるから外に出ていいかな?」

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