5話 - 現状確認 - side:S
目を覚ますと彼は真っ白な空間にいた。
彼は立ちあがり、人々の様子や空間を観察していた。
休日の某巨大遊園地くらいの規模と人数ではないかと彼は予測を立てる。
ふと彼が隣を見ると、この空間に来る前の状態の――三角座りのまま寝転がって目を閉じている――彼女が居た。
規則正しい寝息が小さく聞こえるので、まだこの事態に気付いていないようだ。
彼は彼女の傍へと座り、顔に掛った髪をそっと
ざわめきから彼女を守るように身体を移動させると、その原因へと警戒心を高める。
間近まで迫る頃には人の波がいつの間にか消えていた。
その人の波の代わりに、数人の白装束の黒子が居た。
その黒子達は、30cmくらいの高さで両指が回るくらいの筒を持って、その中に菜箸のようなつるっとした木の棒を何本も
その筒には様々な言語で『一本引いてください』と書かれていた。
彼はそれを見て何故か何も考えず筒から一本抜き取る。
――― 魔王 ―――
その棒に書かれている単語を見て我に返り、隣で寝ていた彼女を見た。
彼女はいつの間にか起きて正座をした状態で棒を引いていた。
彼は咄嗟に『貸して』と、棒を彼女から受け取り、その文字に驚く。
――― 勇者 ―――
と、書かれていた。
その文字を視認したのとほぼ同時に学校のチャイムに近いような音が、どこからともなく鳴り響く。
『れでぃーすあんどじぇんとるめーん!』
『キミ達は死にました!』
舌ったらずな声と幼い子供の声が余韻を残しながら、残酷な通知をする。
『それでそれで?』
『キミ達の為に新天地を用意したヨ!さっき引いた
『さっしゅがー!うちらのかみはきっぷがいいねー!」
『でショ!キミ達はワタシが用意した星で
『いち、にー、さんっ!』
『それをいっちゃあ
天からの可愛い声達はケタケタ笑っている。
ふと彼が辺りを見渡すと、周囲の人間は気が付いたら居なくなっていて、遥か彼方にぽつぽつと数人、人影が見える。
『
『ぼくがわけたよー!』
『キミ達はグレードU《アンノウン》だネ。数少ないレア
『おめとー!』
『まず籤を指で撫ででみてネ』
なるほど、グレードというもので分けられている為に人数が少ないのか、と彼は
彼の手の中には彼女から借り受けた籤があり、彼女がこちらを見ていたのもあって、笑顔と共に返す。
彼は声の通り、右手にあった木の棒を左手の人差し指で下から上へとひと撫でした。
【
木の棒から硬質な声が流れ、撫でた後を追う様に光り、その光が彼を覆い尽くしてしまった。
後に残るのは何もない白い空間。
『いい旅をネー』
『ねー』
白い空間に響く楽しそうな声はケタケタと鈴のように転がっていく。
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