4話 - 神の領域 -

「あの、すいません。私は何の為に召喚されたのでしょうか?」


 マッチョさんに呼びかけたのだが、よっぽどショックだったのか固まったまま返事が無い。

 周りに居た皆さんも無反応で固まったままシーンと静まり返ってしまった。


「……あれ? 私、何か変な事言ったかな?

 ごめんなさいっ!」

「いやいや、謝らなくて良いヨ。異世界のきみ


 私の言葉に被るように上の方からダンディな声が聞こえた。

 恐る恐る上を向くと天井から光の塊がスーと降りて、目の前で止まった。


「初めまして、異世界の君。ワタシはこの世界『ノルドストレーム』の神様だヨ。

 今はキミとワタシしか動いてないケド、心配しないでネ。

 彼らは降臨に耐えきれないからこうしてあげているんだヨ」


 光の塊は、先ほどの声とは違って小さい子のような――性別が分からない――おどけた声に合わせて光を揺らしている。


「きっと聞きたい事多いと思うけど、簡単に言うネー。

 キミの世界は今、人が居ません。あの雪の所為でネ。

 私たち、別の世界の――君の世界で言う異世界の――神達が手分けして、自分たちの世界に避難させてるんだヨ」


 これは夢なのかな?と思い頬をつねるが、痛い。

 やけっぱちで『寝たら雪山に戻ってるかも……』と、祈りながら起き上っていた状態をゆっくりとまた寝る体勢へと戻し、まぶたを閉じ……「閉じちゃだめだヨ、異世界の君」……れなかった。

 良く分からない力で、瞼が閉じないよう上下に引っ張られ、背中を押されるように上体を起こされ、光の塊が出現した時と同じ体勢を取らされる。


「それでネ、異世界の君は忘れているかもしれないけど、此処ノルドストレームへ来る前に籤引くじびきしたデショ?」


 強引に話を進めてくる光の塊を見つめていると、記憶に掛っていたかすみが晴れて行くように段々と思いだしてきた。

 避難小屋から目が覚めると何もない真っ白い部屋で、人がいっぱい居て、総兄も居て、なぜか白い黒子に割り箸で出来た籤を引かされた。

 割りばしの先には勇者って書いてた気がするけど……マッチョさんに『魔王』って呼ばれてたよね、私。


「君の隣に居た子が籤を取り換えたの覚えてるカナ?」

「総兄の事?」


 うーん、あまり記憶にない。

 総兄に見せてって言われたのは覚えてる……


「そう。あれが原因で、あの子と君を取り違えちゃったんだよネー。

 だ・か・ら、私に過失はないケド サービスでスキルあげちゃうネ!」


 えっ……! と声を出す前に光の塊が激しい光を放った。

 目を開けていられない光の波に、咄嗟に手をかざしその隙間から見た時にはもう光の塊は消えていて、マッチョさんや周りの皆さんが変な顔で私を見ていた。

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