金髪の美女-1
絶叫が逆流していく……口腔から肺までの呼吸器の道筋すべてが暴力的な嵐から圧迫されて、彼女は窒息へと落ち込んでいく自らの運命に抗う本能によって必死に大きく息を吸い込んでいた……
「ごほっ…………はーっ……ごほっ、ごほっ……はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
彼女は真っ赤になった首より上部を少しずつ取り戻していった、息を整え荒々しさはようやく削がれていった、桃色に上気しているが死を彷彿とさせてしまうドス黒い赤色からは逃げ出すことが出来ていた。
彼女の本能が彼女を助けていた、しかし、突然蘇生されたその先の世界に放り投げられてしまった彼女は当然のように錯綜していた。
彼女は金髪で美しい顔立ちであり、透き通るような白い肌を取り戻していた、少しよれたデザインの純白のワンピースを着ていた、彼女は自分が全裸で白い床に吸い込まれたという直前の記憶らしい記憶との様々なギャップに
即ち、彼女は椅子に固定され両手両足をしっかりと錠により縛られていたのだ、椅子と錠との間には重々しい金属の鎖が結ばれていた。彼女は、監禁されてしまったのだ、とようやく理解するのだった。すると、身の回りから少しずつ観察する余裕が生まれていき次々に視線を移していった。
始めは目の前に重厚な存在感を示し続ける巨大な装置のような物体に意識を奪われてしまった。ガラスのような円柱を乗せた装置で水族館の水槽みたいだったが、中身は完全な透明であった、しかし不思議なことに水槽の奥の景色を一切見通すことは出来なかった。
縛り付けられた椅子は金属なのか磁器なのか、真っ白であった。そして、連なる床や天井もまた真っ白に統一されていて全てが無機質な印象を湛えていた。天井から注がれた照明、不思議なことに首をギリギリまで後ろに向けて覗き見た部屋の奥側は真っ暗で壁面を見ることは出来なかった。
「最後の一名が目覚めの訪れのようです。これで全員が揃いました」
彼女は突然の声に驚いてしまった、男の声、動悸が始まっていた。
声は照明から注がれたようだ、照明にはスピーカーが内蔵してあった。
彼女の右側にはまるで彼女を外部から遮断するような壁があり仕切られていた、左側には仕切りがなく、椅子だけがあった。頑強な縛りのせいで精一杯身体を動かして見たところで得られる視界は僅かなものだった、始めは隣の椅子をじっと見つめているばかりだった。
「それでは始めましょう」
再び、男の号令。
彼女は2度目の声で気付いた、声がスピーカーの他にもう一つ重なっていることを。右側から聴こえる男の声だった。恐る恐る彼女は縛られた身体を精一杯動かして仕切りを越えて覗いてみるのだった。ギリギリのところで見えていた、真っ青にペイントされたような肌をした黒いスーツ姿の男が彼女同様椅子へと縛り付けられていた、ただし彼の隣には、スピーチ用のマイクが備えられているのがとても違和感として感じられた……号令の主は彼に違いなかった。
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