俺と少女と初めての戦い
学校から自分の寮へと帰宅し、そのまま一日の疲れのせいかベッドで寝入ってしまう。気が付くととっくに夜9時をまわっていた。長い時間寝ていたためか夜は寝れそうにないと自分でもわかる。となれば食べ歩きでもして少し時間を潰すという考えが頭をよぎる。昼ごはんも食ってないうえに、追いかけまわされたりとそれなりの運動をしたため腹ペコだったのが外へと駆り立てる原動力となった。幸いにもファストフード店は近くにあったので、最初にそこで腹ごなしをすることにした。
「何を頼むかな…シンプルに最初は軽くハンバーガーか?それともドデカバーガーいっとくかな…」
案外こういうのは悩むものだ。今までは母、妹、姉と女手が家にあったため朝昼晩の食い物には困らなかったのだが、一人暮らしになるとこういう点では困る。だが能力のこともあるので、一人暮らしをせずにはいられなかったのが運の尽きだ。もうあの幸せな待っていればあたたかいご飯が迎えてくれる家ではない。結局ハンバーガーで済ませることにした。すぐに食べ終わり、向かいのラーメンの店に行くことにする。少々列ができていたのだがすぐに順番が流れてくる。店の数量限定味噌ラーメンを食べ、すこしガヤガヤしている店の前を抜け、すぐに街の方へ繰り出す。
「もうすぐ12時だし一旦家に帰るかな…女装のままも嫌だし…」
何か食べようとはするものの食べたいものが見つからず、仕方なく家に帰ろうとしたのだが、道路の向こう側に顔を見たことのある学園の生徒が駆けていった。息を切らしながら、まるで誰かから追いかけられているかのように長く艶やかな黒髪を揺らしながら走っていった。実際ドタバタと複数人が走る音が聞こえてきたためすぐに異常を察知できた。
「あの校章は…1年生だし顔も見たことあるような気がするな、クラスメートか?流石にここで助けに行かなくちゃ男じゃないよな…」
クラスの在籍数が多いのだし、クラスメートの顔を把握しきれてないのは仕方のないことだと自分に言い聞かせる。そしておそらくクラスメートであろう人物が消えていった路地裏に入りあとを追いかける。
「どこまで行ってんだよ…はあはあ…」
暗く迷路のような路地裏ではあったのだが足音が響いてくるのでその方へと足を進めた。影が見えてきて、ほどなくして追いついたのだがその状況見ると顔を引きつらせるしかなかった。おそらく他の道から彼女を追っていたであろう巨漢が横たわっていた。
「おっと…これは予想を大きく右斜め前に突っ切っていったな…」
すると声に気付いた少女が振り向きざまに”何か”を投擲した。”何か”を投擲したのだがその”何か”がわからない。確かに彼女は”何か”を投げたのだが、それが見えない空気を裂く音は聞こえるのだが目では認識できない。単純にやばいと思い真上にテレポートした。スカートなのだが履いているのはパンツなので大丈夫だ問題ないと自分に言い聞かせる。それから差し込む月明かりで気づいたのか、おそらくクラスメートだと思われる少女が口を開く。
「アンタは今日やらかした女装変態野郎?」
クラスメートである確信を得た。今日俺の姿を見て今日やらかした変態だと思うのはクラスメートだけだ。写真は出回ってないと思いたい。そうでないと困る。しかしどう返答したものか…いっそのこと開き直ったほうが能力のこともバレないしいいのではないだろうか。
「女装変態の能力はテレポートなんだ。種が割れやすい能力だな、へ・ん・た・い君」
前言撤回、本当のことを言って変態から一般生徒にジョブチェンジしたくなってきた。実際能力対策とかはされることはないし、ていうかすることはできないしいいんじゃね?ていうかクラスメートに言うかそうするか、そうだよ、そうしよう。
「クラスメートよ!話を聞け俺は変態ではない!」
能力に関して説明をしようとしたのだが、途中で彼女がしゃべる。
「クラスメートって呼ぶのはやめてくれない?私は竜宮りゅうぐう 舞耶まやっていう名前があんの、あんたは宇佐美だったっけ?」
そうすると少女竜宮は名前を確認してくる。
「名前に関しては名字で呼ぶのはやめてくれ、宇佐美ってなんか男なのに可愛くて嫌なんだ。零でいい」
小学校、中学校と名字のことで経験してきたトラウマを繰り返さぬように名前で呼ぶように促した。そして本題に入ろうとしたところ、路地裏に熱い風が吹き荒れる。
「ここにいたかぁクソガキィ…」
ガラの悪い男が竜宮の後ろから現れた。すぐにこの熱風が男の能力であると気付く、どうやら竜宮に用があるようで、とてもお怒りの様子で相手にしたくないぐらい形相が悪かった。竜宮の顔から先ほどまであった俺をからかう余裕の表情はなくなっていた。、どうやらこの男が追いかけていたやつのボスらしい。そしてガラの悪い男は吠える。
「お前が列に割り込まなかったら!幻の味噌ラーメンが食えたのにふざけるなぁぁ
あと一人前だぞオラァァ!」
零はしょうもない理由だと思った後に自分が食べたものを思い出した。味噌ラーメン食ってたな…そういえば…俺は列に並んだし悪くないよね。うん。とりあえず竜宮に謝るように説得する。
「おい謝っとけよ(ボソッ」
「嫌だ!」
お嬢は即答なされました。もちろん向こうもご立腹のようで、手から炎を操りだす。
「もう遅いぞクソガキどもぉぉぉ!」
「ちょ、俺もかよ!」
いつからか俺も数に入っていた。流石にもう戦闘態勢に入りだす、時計をふと見ると12時になるまで、あと6分弱だった。頭の中で男を倒すための作戦を練り始める。チート的な能力なんてもんは持ってないし、異世界への扉が開いてからもろくに戦ったことはなかった。だが確かに中学生の頃に培った妄想の力は確かであった。ふと竜宮の方を見るともうすでに動きはじめていた。竜宮は手から”何か”を投げる、それは炎の壁を裂くのだが、壁が切れたところから攻撃が来ることはわかるため男はひょいと簡単によける。そこから炎の玉をこちらに打ち出してくる。竜宮に当たる直前に体に触れテレポートで近くの廃ビルへと飛ぶ。少し呼吸が落ち着いた後に竜宮に話しかける。
「竜宮、お前とあいつでは相性が悪いのはわかるだろう。ここは俺に任せてみないか?」
突然の提案に彼女は驚く、そして自分の能力のことがわかっているからこそ一歩引いたのだろう。そしてもう一つの提案を彼女に持ち掛ける。
「この時計が12時になったら、俺に何らかの方法で知らせてくれないか?声をあげるとかなんかの合図でもいい。」
彼女はうなずき返す。そして一拍を置いて問いかけてくる。
「でもなんのために、12時であることを知らせるんだ?」
俺はどこからあふれるかわからない自信を胸に彼女に宣言する。
「あの男をぼこぼこにするための最初の一手さ。」
外では男の怒号が飛んでいる。ときおり無駄に炎を打ち出している。
「おぉぉぉい!もうそろそろ出てこいやクソアマがァァ!」
俺はテレポートで男の前に降り立ち、笑みを浮かべながら宣言する…
「12時だ、12時までにお前が俺を倒せたら勝ちだ。もし倒せなかったらもうお前は俺を倒すことはできない。」
初めての異能を使っての戦いが始まろうとしていた。
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