第3話(5)



境界に戻って、アルトの現したトビラに入ると、柚季は地上界に立っていた。

 あたりは薄暗い。

(ここどこ・・?)

 とても見覚えがある・・・──教室だ。

 すると、柚季の背後にある黒板の中から優歌が姿を現し隣に足をついた。

 続いてアルトも姿を現すと、床に足をつく。

「よかった。みなさん、無事地上にでたみたいですね」

 アルトは柚季と優歌を見ると、少し微笑んだ。

「って言うか・・・学校にでるなんて・・誰かに見られたら・・」

 柚季がそう言葉をこぼすと、アルトは

「あっでしたよね・・でも、誰もいないみたいでよかったです」

「・・確かに誰もいないみたいだけど・・・」

 柚季はそう言いつつ、教室の壁にかけてある時計に目をやった。

 ・・・約18時30分。

「学校に出れば、柚季さんと優歌さんのご友人の・・・琴音さん、でしたよね?彼女に会えると思ったんですが・・・──本当に誰もいませんね。他の部屋を探してみましょうか?」

 アルトは不安げな顏で柚季を見る。

「いやっ・・・もうこんな時間だし、帰っちゃったと思うんだけど」

 この教室以外も、明かりはついている様子はなく、もちろん、人のいる気配もない。

「・・・あ、でもまだ部活はやってるかも!」

 柚季はそう考え、教室からでようと出入口に向かおうとした時・・・背後から「ちっ」と舌打ちがきこえた。

「!」

 はっとして振り返ると、そこにいるのは優歌。

 アルトも動揺した様子で、彼女を見ている。

「・・・あーぁ。やっぱり地上になんて戻らなければよかった」

 優歌は腰に手を当て、不機嫌そうにそう言葉をこぼす。

「・・・は?」

「ゆ、優歌さん、そんなこと言わないで下さいよ・・」

 優歌はアルトの言葉はきく様子なく、大きくため息をつき、

「せっかく全てにおいて諦めがついた頃だったのに・・・もう一度生きたいって思っちゃったじゃない!ちゃんと責任とってよね?天界人」

「─・・」

 さっきから黙ったままの優歌だったが・・・──

 突然、口を開いたと思ったら・・・思わぬことを口にされた。

 アルトは助けを求めるように、柚季に視線を送った。

「・・・責任とって・・か。わたしたちの責任、は優歌と琴音を会わせてあげることだと思うんだけど」

「・・・」

「気持ちは分からないわけではないけど・・・それ以外の責任はとれないから」

 柚季が静かな声でそう言って、優歌を見据えると彼女はわずかに目を伏せる。

「はぁ・・分かってるから!ただ、言ってみただけよ」

 そう言う優歌の目には、僅かに涙が滲んでいた。

「・・・」

 柚季はそんな優歌を見て、責任、を感じないわけではなかった。

 優歌を地上に連れてきたのは・・・──自分のため。

 自分の命を守るため、すずの出した情景を満たすため。

 そう考えると、自分の身勝手さが嫌になる。優歌はそんな身勝手な自分の行為に巻き込まれてしまっただけなのだ。

「・・──ごめん・・優歌」

 柚季はいつの間にかそう呟いていた。

「──・・・」

「柚季さん・・」

 柚季の気持ちを察したのか、アルトは心配そうな目をこちらに向けた。

 すると、優歌は口を開く。

「まぁ、あたしを地上に連れてきたのには、きっと何か特別な理由があるんでしょ?でも、どうだっていいのよ、そんなことは」

「!・・」

「もう一度、琴音に会えるならばね・・!」

 優歌は力強くそう言うと、目の淵にたまった涙を掌で拭った。

 柚季はそれに大きく頷く。

「・・大丈夫。絶対に会わせてあげるから」

 ・・・教室から一歩廊下にでると、西校舎の3階にある美術室に、ポツリと明かりがついているのが見えた。

(もしかしたらまだいるかもしれない・・)

「こっち!」

 柚季はアルトと優歌にそう言葉を投げると、駆け出した。



 美術室の前に到着した3人。

 柚季は少しだけドアを開いて、中の様子を伺う。

「あ・・いた」

 真ん中の列の前から二番目の席。

 お決まりになっているその席に、琴音は座りただ静かに筆を動かしている。

 ・・・もう部活が終わる時刻はすぎている・・・美術室には、琴音一人だけだ。

 そういえば・・琴音、美大を目指すって言ってたっけ・・・

 もしかしたら、その試験の勉強をしているのかもしれない。

 そんなことを思っていると

「・・・琴音!」

 柚季と同じようにドアの隙間から様子を窺がっていた優歌は、そう叫んだ。そして、彼女はその透ける体でドアを通り抜け、美術室の中に入ってしまう。

「!・・」

 ・・・琴音の前に立った優歌は、また「ねぇ琴音!」と名前を呼ぶが、琴音からは何の反応もない。

(琴音・・優歌の姿が見えないんだっ・・)

 今思えば当然のことだ。

 ・・・だって今の優歌には、肉体がない。それでは・・2人が会うなんてできない・・・。

 柚季がドアから顏を離すと、隣に立つアルトと目が合う。

 彼の顔色は不安げだ。

 ・・・きっと柚季と同じことを考えているんだと思った。

 すると美術室から優歌が戻ってきた。

「・・・責任とってよね?天界人」

 優歌は柚季の姿を見るなり低い声でそう言った。

 柚季はその視線から逃れるために、アルトを見ると

「だ・・大丈夫!アルトがどうにかしてくれるから!」

「・・・えぇ!?」

 アルトは驚いたように目をパチクリさせていたが、柚季はかまわず言葉を続ける。

「・・・アルト、不思議な術使えるじゃん・・・それでどうにかできないー?」

 柚季が思いつく方法はもうそれぐらいしかなかった。

 ・・・自分も何かできたらよいのだが、あくまで柚季は普通の人間。あまりできることはなかった。

「えー・・と・・ですね・・」

 アルトは柚季と優歌の視線を気にしながらも、手の中に分厚い本を現す。

 パラパラとページを捲りながら、

「・・じ・・実は・・こんなこともあろうかと・・とっておきの術を用意しておいたんです・・・」

「さすが・・!にしては元気なくない?」

 アルトはあるページで手の動きを止めると、言った。

「用意しておいたのはいいんですが・・こんなジャンルの術、使ったことないですし・・上手く発動するか分からないので・・期待に応えられないかもしれません・・」

 柚季はそれに少し苦笑した。

「大丈夫だからっ・・上手くいくかもしれないし・・取りあえずやってみせてよ」

「・・・はい」

 アルトは、紙面に指先を乗せる。

「・・この術は、魂を一定時間、物質に変えることのできる術なんです。ここで言う物質というのは、生きていた頃の体のことを示します・・」

 アルトは不安げな声色のままそう言葉を並べると、優歌を見た。

「そういう細かい説明はいいから、早くしてくれない?」

「は、はい」

 アルトは優歌の言葉に、紙面に置いた指をゆっくりと動かし始めた。

 指先をなぞった後の紙面には、光の筋が浮き上がり、それは指の動き通りの複雑な模様をかたどっていく。

 アルトの表情は真剣そのものでそれを見ていると、こちらまで上手くいくかどうかより不安になってくる。

 数十秒後・・

「何とか・できました」

 アルトは紙面から指を離すと同時に、そう呟いた。

 ・・紙面にかかれた模様はより強く光を放ち、その中から現れたのは、透明は素材でできたジョウロのようなもの。

 中には淡いピンク色の光をおびた水のような液体が、4分の1ぐらい入っている。

 アルトは本を閉じ、それを手に取ると

「あぁ・・やっぱり僕の力ではこの量が限界です」

「それって?」

 柚季が訊くと、

「・・この液体を優歌さんの体にかければ、琴音さんにも見えるようになるんですが・・・この量だと60秒ぐらいが効果の限界だと思われます」

「!・・・」

「すみません・・僕にもっと力があればよかったんですが・・──それでもよろしいですか?」

 アルトは不安げな目線を優歌に送る。

「・・それだけあれば十分」

 優歌は力強い声でそう言うと、微笑んだ。

「・・本当ですか。よかったです」

「・・・」

 アルトは不安げな表情を緩めると、ジョウロの先を優歌に向けた。

「それでは・・いきますよ?」

「はーい」

 アルトがジョウロを傾けると、サラサラと液体が流れでる。

 優歌にかかると、その部分を色のあるものに、物質のあるものに・・変化させていく。

 アルトは優歌全体にまんべんなくかかるよう、ジョウロの先を上へ下へと動かした。

「・・すごい!全然違和感ないよ、優歌」

 柚季の目に映る優歌は、普通の人間と全く変わりないと言ってもよかった。

 さっきまでの透明な体が、まるで嘘のようだ。

「・・ありがとうね、天界人」

 優歌は自分の体を目で確認すると、満足げに微笑んだ。



 琴音と未来を約束したのに、突然こんなことになってしまうなんて。

 ついていないにもほどがある。

 本当は・・・私は、琴音ほど絵を描くことが好きではない。

 一緒に美大を受けよう、大学で一緒に勉強しよう、それは全て・・・いや、半分ぐらいは琴音のためだった。

 琴音は私と違って、自分に自信がない。

 そんな琴音の背中を少しでも押してあげる誰かがいれば、きっとあの子は私なんかより、ずっと頑張れる。

 その誰かに、私はなってあげたかったのに・・・。

 それはもう叶わない。

 あの事故は、何の前触れもなくやってきて、あっけなく私の命を奪っていった。

 命、ってこんなにもろいものだったんだ。

 それに気付いたのは、全て失った後で。

 あの時、よそ見をしていなければ、その後悔は今でも続いている。

 もう全て忘れてしまおう、そう決意したとき、思わぬチャンスが舞い込んできた。

 もう一度、琴音に会える。

 叶わないと思っていたのに、叶うかもしれない。

 ・・・それがたった一瞬だとしても。



 琴音は筆をパレットの上に置くと、ため息をついた。

(そろそろ帰ろうかなぁ・・)

 何か絵を描いていれば、気がまぎれると思ったのだが、やっぱりそう上手くはいってくれない。

 画用紙やパレットの上のカラフルな色たちも、今の琴音の目にはモノクロにしか見えなかった。

「あーぁ・・」

 何だか、また泣いてしまいそうだ。

 もう泣きたくなんかないのに。

 だって泣くと、周りに迷惑をかけてしまう。それに、心配させてしまう。

 ・・・けれど、笑いたくもなかった。

(今日、柚季、学校かなかったなぁ・・)

 風邪だろうか・・・やっぱり寂しい。

「・・・」

(・・柚季に美大受けるなんて、言わなければよかった・・)

 琴音は片付けをしようと、立ち上がる。そして、パレットや水入れを水道へ運ぶ。

(だって、優歌がいないと頑張れる気がしないよ・・・)

 水をだそうと、蛇口に手を置いたその時、ガラガラとトビラの開く音がした。

(こんな時間に誰だろう・・)

 そう思って振り返ると、そこには・・・──

「・・・優歌!?」

 しんでしまったはずの、優歌がいた。

「琴音―、頑張ってる?」

 優歌はいつもの明るい声でそう言い歩みを進めると、琴音が座っていた机の前で立ち止まった。

 そして、広げたままのスケッチブックを覗きこみ、

「へぇ~きれいに塗ってあるんじゃない?」

「ほ・・ほんとに優歌なの?」

 琴音は信じられない気持ちのまま、彼女の方へ駆け寄るとそう訊いた。

「何言ってんのよ!当たり前じゃない」

「!・・──」

 その言葉をきいた瞬間、琴音は優歌に勢いよく抱きついていた。

 ・・・嬉しくてたまらないというのは、きっとこんな時なんだと思う。

 ・・・優歌がしんでしまったってことは、きっと悪い夢だったんだ。わたしは悪い夢にうなされていただけ。

 その証拠に、優歌は今、わたしの目の前にいる。

「優歌ぁ・・・よかったぁ・・・・」

「──・・・ね、琴音。それ何の絵?」

 優歌の問いかけに、琴音は彼女から離れると

「今度のコンクールにだす絵なんだぁ。

 締切ギリギリなんだけど・・やっぱり納得いくまで塗りたくて!

 あとね、提出するまえに先生にみせて、もっと上手く描けるようにアドバイスもらいに行こうと思ってるんだ!

 あたし上手く描けないし、そうでもしないと優歌においつけないからさぁ・・」

 優歌に会えたことが嬉しくて、いつもより次々と言葉がでてくる。

「・・・」

 そんな琴音を見て、優歌は控えめに微笑んだ。

「私なんかより、琴音の方がずっと上手よ」

「・・・そんなことないよ~」

 優歌はそれに首を左右に振る。

「ううん。琴音の方が本当に上手。純粋な気持ちが伝わってくる、とってもきれいな絵よ!」

「・・・えへへ。ありがとう」

「・・──」

 琴音は優歌の言葉が素直に嬉しかった。

 ・・・けれど、少し違和感を覚える。

 優歌はわたしのことをいつも励ましてくれる、さっきの言葉みたいに。

 ・・・きっとこの違和感は、優歌の言葉が素直すぎるからだ。いつもなら、優歌は言葉に完全には頼らない。

 どうして・・・素直になる必要があるのだろう。

 どうして・・・──。

「・・私さ、ちょっとトチっちゃって、琴音と一緒には大学受けること、できなくなっちゃったのよ」

 優歌はため息混じりにそう言葉をこぼした。

「!・・─」

 思わずドキリとする。

 何か言葉を発そうと口を開くが、それは叶わなかった。

 「どうして?」そう訊きたかったが・・その応えを知ってしまって本当によいのだろうか・・・その感情の方がずっとずっと上手だった。

「・・そう・・なんだ・・」

 琴音は呟くような声で何とかそう返す。

「・・じゃぁあたしもやめようかなぁ・・」

「はぁ?どうして琴音までやめる必要があるの?大学で絵の勉強したいんでしょ?」

 優歌は不機嫌そうに眉を寄せた。

「うん・・でも・・──」

 琴音が口ごもると、優歌はこちらをしっかりと見据えまた口を開く。

「琴音、絵を描くこと、好きなんでしょ!?なら、大丈夫!

 その気持ちがあれば、私なんかより、ずっとずーっと頑張れるから」

「・・優歌・・あたし・・・」

 絵の勉強、頑張りたいよ。

 でも、とても不安なんだ。

 こらえきれなかった涙が、次々と琴音の頬を伝う。

「っ・・あたし・・頑張れるかな・・?」

(優歌が隣にいなくても・・)

 優歌はそれに、穏やかな表情を浮かべ頷いた。そして、

「まぁ、一緒に頑張るってことは無理になっちゃったけど、私にも応援するぐらいのことはできるから!」

「・・・」

「ごめんね、琴音。一緒に頑張ることができなくて・・・でも、ずっと応援してるから・・・──!」

「っ・・・ありがとう・・優歌」

 琴音は目の淵にたまった涙を、掌で拭った。

 ・・・見ると、優歌の嬉しそうな・・だけど、寂しそうな表情が琴音の目に映る。

 ・・・優歌は琴音に背を向け、走り出した。

「!待って・・優歌!!」

 琴音は彼女の背中を追いかけると同時にそう叫ぶ。

 ・・・きっと、今ここで優歌の姿を見失ってしまったら、もう一生会えなくなってしまう、琴音はそう思った。

 優歌はその言葉に、出入口で立ち止まると

「ばいばい琴音」と呟く。そして、ドアを開け外へ走り去った。

「っ・・・──待って!いかないでっ」

 琴音は必死に優歌の後を追いかけ、美術室の外へ飛び出した。

 ・・・でも、そこには薄暗い廊下が続いているだけで・・優歌の姿はなかった。

「優歌・・!!どこに行ったの・・・いかないで・・・」

 琴音はこの辛すぎる事実に、ただそう呟くだけで精一杯だった。

「あたし、まだ優歌に話したいこと沢山あるよっ・・・だから行かないで!!お願いだからっ・・」

 必死に泣き叫べば、また優歌が姿を現してくれるかもしれない。

 琴音はもうそう信じるしかなかった。

 ・・・・そして、意識を手放した。


「・・・優歌、本当にこれでよかったの?」

 廊下の真ん中に崩れるようにして眠ってしまった琴音を見下ろし、柚季は隣に立つ彼女にそう問いかけた。

 アルトも琴音を眠らせるために開いた術の本を閉じ、不安げな表情で優歌を見る。

 優歌は透明に戻ってしまった姿で、微笑んだ。

「・・・うん。これでいいのよ。私と会ったことを”夢だった”って思ってくれた方が、この後引きずらなくて済むわけだし」

「・・・」

「これで少しは琴音の助けになれたらいいんだけどね」

 優歌は静かに琴音の方へ視線を落とした。

 その視線はとても優しげで、優歌が琴音のことを大切に思っているという感情がひしひしと伝わってくる。

 そんな風に思ってくれる友人がいる琴音が、柚季は何だか羨ましかった。

「優歌・・わたしも一緒に、琴音のこと応援してもいい?」

 柚季の言葉に、優歌は「もちろん」と言って頷いた。



 柚季は琴音の体を引きずって美術の席まで何とか移動させると、そこに彼女の体を慎重に座らせた。

「・・・」

 部屋が寒いことが気になったので、琴音のカバンからのぞいているブランケットを彼女の背中にかけておく。

「・・・では戻りましょうか」

 アルトがそう呟くように言うと、優歌は何も言わずに頷いた。



 数十分後・・

誰もいなくなった美術室で、琴音はふと目を覚ました。

「!・・ねちゃった」

 それと同時に、自分の頬が涙で濡れていることに気付く。

 ・・・とても悲しい夢を見た。

 いや、この場合、嬉しい夢、と表現してもいいかもしれない。

(もう一度、優歌に会えた・・)

 もちろん、現実には優歌はもういない。

 夢の中だけなんだけれども。

「──・・・」

 たとえそうだとしても・・優歌は笑っていた。

 それだけで、琴音の心に満ちていた濃い闇は少しだけ薄らいだ気がする。

(いつもまでも泣いてちゃだめだよねっ・・・)

 夢の中の優歌は、いつも琴音の隣にいてくれた優歌、そのものだった。

 本当に、彼女に背中を押してもらえた気持ちになれる。

(やっぱりもう少し頑張ってみようかなぁ・・)

 優歌と一緒に目指していたはずの大学、を受けるための勉強。

 優歌がいないから勉強を止めるだなんて、よく考えてみると優歌に失礼だ。

 勉強をやめる理由にされても、きっと優歌は迷惑するだけ。

 それに「ずっと応援してるから!」その言葉が・・・その時の優歌の表情が、頭の中に焼き付いて離れない。

(うん・・・あたし、頑張るよ)

 あなたが隣にいなくても、あなたが望むわたしでいられるように。

「!・・あ、もうこんな時間・・・帰らないと」

 黒板の上の壁にかかっている時計は、もうすぐで19時を示そうとしているところだった。

 スケッチブックを閉じ、立ち上がる。

 とその時、琴音の背中から何かがハラリと床に落ちた。

「!・・──」

 それはカバンにしまってあったはずのブランケット。

(まさか・・──ね・・)


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