第3話

 信とイニの勝負から一週間が経ち―――――。

 二人は異能技部へと入部した。

 日本では同好会を含めても38校にしかない異能技部。

 使える事を知らないという人も少なくない。

 そんな中、得修館では他の部員が練習していた。


 その入口には、何個かのアーマーが用意されていた。

「はああああ!」

「てやぁーーっ!」

 練習中の部員の掛け声や、能力での攻撃が的に当たる音等が館内に響く中、二人はある部屋に向かった。

 

「第1館内室」という場所で、館内で使う様々な道具が入れられた倉庫のような部屋。

 ここが異能技部の活動拠点とされており、話し合い等が行われる。

 二人がそこに入ると、部屋の中にいた部員は何かを囁き始めた。

「来やがったぜ、あいつらが」

「前の雷野郎と氷女か……」

「いけそうな気もするんだけどなー

「雷の方、絶対使い方分かってないよな」

 信はそれを聞いて落ち込みそうになるが、イニはその信を見て話し掛ける。

「……ねえ」

「なんなんだよ?」

「聞こえないふりでもしておきなさい」

 囁きを気にせず、ホワイトボードの前へと歩く。

 そこには、どういうわけか顧問の男が立っていた。

 二人がボードの前に立つと、男はそれを指を差し、部員の目を引こうとする。

「今日から、この二人が部に入る事になったぞ!」

「網島です」

 信は名字だけ名乗ったが、イニの方は全く喋ろうとしない。


「おい。 網島みたく、苗字だけでもいいんだぞ?」

 男が呼び掛けるが、彼女はそれにも応じない。

 それどころか、無言で部屋を去っていった。

「……なんなんだ、あいつは?」

 男も思わず呆れてしまう。


「会ってまだそこまで経ってなくて、僕にも素性が分かっていない所があるんですけど、きっと彼女は『そういうタイプ』なんですよ。 一度呼び戻してきます」

「おい! 放っておけ!」

 信は、彼女を追いかけるように部屋を出た。


 遠くない所にいるはずなのに、まるで見つからない。

 そうして見つけたのは、校舎4階にある教室だった。


「はぁ……はぁ……」

 息を荒げながら、彼女の姿をひたすら眺める。

「貴方は……網島、と言ったかしら」

「確かにそうだけど……」

「網島くん、ね……。 これからはそう呼ばせてもらうわ。 それで、ここまで私の事を追いかけて、何か大事な事でもあるのかしら?」

「違う。 訊きたい事があった。 なんで名前を言おうという時に逃げたんだ?」

 信が問い掛けると、彼女は目を瞑り始めた。

 顔色も、少しだけ赤くなっていた。

「えっ? あれは……魔が差しただけよ」

「そうなのか?」

 思わず信も戸惑ってしまった。

 その後は二人で第1館内室へと戻り、イニも自分の名前を言った。


 こうして、長いような自己紹介は終わった。

「よし、自己紹介は終わったな。 それじゃ、しばらく休憩したら得修館まで来てくれ」

「……?」

 顧問の発言に、首を少し傾けるイニ。

「どんな能力なのか、一度見せてほしいんだ。」

 顧問が理由を言うと―――――。

「……それなら休憩は必要ないわ。 能力だけなら、今からでも問題はない」

「だが、お前も疲労が貯まってるだろう?」

「そこまで心配しなくても問題はないわ。 私は今からでも準備する」

「ああ……」


 顧問とイニの話し合いが終わると、二人と顧問は得修館に入っていった。

 

「これは能力テストなのか……?」

「……私には分からない」

 他の部員が練習している中で競技用のアーマーを装備した二人が向かったのは、壁際のスペース。

 そこには、電源が切られたように見える機械が立っていた。

「人型のロボットがあるだろう? それを自分の能力で攻撃するんだ。 あと、このロボットには能力の強さを数値化するための機械が仕組まれているぞ!」

 顧問の説明を聞き、まず能力を試すのは信。

「何をイメージするんだったか……」

 だが、彼はどう能力をイメージするかを忘れていた。

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