第13話 嘘
翌朝、山の麓の方が何やら騒がしい事に気づいたノスリさんは、こっそりと山を下りて様子を見に行きました。
するとどうした事でしょうか、街の働き盛りの男の人たちが大勢山に入って来ているのです。全てが燃え尽きて何も残っていないこの荒れ果てた山に、これまで登ってくる人など誰も居なかったと言うのに、これは一体どういう事なのでしょうか。
ノスリさんが大きな岩の陰からこっそりと覗いていると、スコップや空の砂袋をトロッコに積んで、大勢の人がどんどん入って来ています。
「山頂には誰も住んでいない古い城がある。あれも取り壊して煉瓦は再利用しよう」
「そうだな、残しておいても仕方がない」
「あれは壊すのが大変だから後回しでいいだろう。まずは土をどんどん運ぶんだ」
一体何の話をしているのでしょうか。ノスリさんは大急ぎで山頂のお家に戻ると、イトヨくんにその話をしました。あれからだいぶ弱っていた彼はずっとベッドの中から出て来ませんでしたが、落ち着いて話を聞いていました。
「それは多分、湖を埋め立てる為の土をここから持って行く気だよ」
「山を崩して?」
「そう。僕たちはまた居場所を追われるんだ。彼らに」
「また……ですか」
ノスリさんはゆっくり立ち上がりました。
「イトヨくん。行きましょう」
「どこへ」
「私が私の為に笑顔を作るのは終わりです」
「ノスリ?」
「あなたと私の為に、自分に嘘をつくのは終わりにしましょう」
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