第7話 友達

 何日か過ぎて、ノスリさんはまた牛乳と卵を買いに街に下りました。


「おじさん、また新しい本が入ったんですって?」

「ああ、そこに取ってあるよ」

「いつもありがとう」


 おじさんはニコニコ顔で声を潜めます。


「最近何かいい事あったのかい? なんだか生き生きしてるよ」

「友達ができたんです」

「そりゃあ良かったねぇ。でもノスリちゃんはこの街の人みんなが友達だろう?」

「あ、そうですよね。私、変なこと言っちゃった」

「ははは、余程好きなんだねぇ、その友達」


 ノスリさんは貸本屋を出て、そのままおばさんのところで牛乳と卵を買いました。


「聞いたかい? 南の方の湖、最近汚れが酷くて水草も育たないんで腐臭が漂ってるんだって。それで病気が流行るといけないから埋め立てることにしたらしいんだよ」

「あの綺麗だった湖ですか?」

「ほら、戦争があっただろ? あれですっかり汚れちまったんだよ」


 ノスリさんはイトヨくんが言っていたのを思い出しました。あの時、彼は少し怒ったように『もう綺麗じゃない』と言っていたのです。イトヨくんは知っていたのです。湖が汚れてしまった事を。


「勿体無いですね、あんなに綺麗だったのに」

「そうさねぇ」


 ノスリさんは何かいたたまれない気持ちで山のお城に帰りました。帰り道、貸本屋のおじさんに言われた事を思い出しました。


 


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