第6話 日課

 翌日は良く晴れたいい天気でした。ノスリさんは花色の短いドレスで出かけます。


 昨日のイトヨくんのはにかんだような笑顔が嬉しくて、彼女はついつい思い出してはクスッと笑ってしまいます。


「おやノスリちゃん、今日はいつにも増してごきげんだね」

「あら、おばあちゃん、こんにちは。今日はいい日なの」

「おやおや、これはノスリちゃんにも春が来たかねえ」

「そんなんじゃないのよ」


 それでもノスリさんは初めての『ともだち』が嬉しくて仕方がないのです。


「イトヨくん、来てないかしら」


 楽しげに独り言を言いながら貸本屋に立ち寄って本を借り、おばさんのところで牛乳と卵を買うと、ノスリさんはもう用事が無くなってしまいました。


 仕方がないので山の天辺のお城に帰ると、なんとお城の前にイトヨくんが立ってこちらに向かって小さく手を振っているではありませんか。


 ノスリさんは嬉しくなって山を駆け上がりました。


「イトヨくん、今日も来てくれたんですね」

「うん。ノスリに会いに来た」


 ノスリさんは嬉しくて、なんだかくすぐったくなりました。


「どうぞ、お茶淹れますね」


 相変わらずイトヨくんは本に興味津津で、ずっと本を眺めています。ノスリさんの方など全く見てくれません。でもその空気のような感じがノスリさんには心地良いのです。


 こうしてイトヨくんは、ノスリさんのお家に本を読みに来るのが毎日の日課になりました。ノスリさんはとても幸せでした。

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