第3話 少年
あれから、ノスリさんは街に出かける度にあの少年を探しました。いろんな人に少年の事を聞いて回るのですが、誰もその少年の事を知りません。それなのに、帰ろうとする頃になると必ずどこからか現れて、ノスリさんに一言「嘘つき」とだけ言って行くのです。
いつしかノスリさんの頭の中は、あの少年の事で一杯になってしまいました。寝ても覚めても彼が気になるのです。夢にまで現れて「嘘つき」と言って行くのです。
勿論、街に出る時の彼女はいつものように道行く人に笑顔を振りまいて、普段と全く変わらないノスリさんです。が、その心の中は決して穏やかではありませんでした。
そして今日。帰り際、またあの少年に会いました。ノスリさんは意を決して声を掛けました。
「こんにちは、また会ったわね」
「嘘つき」
「ねえ、私の家に遊びに来ない?」
「……いいよ」
驚くほどあっさりと少年はついて来ました。
ノスリさん自身も、何故自分がこんな事を言ってしまったんだろうかと驚きました。何故なら、彼女は今まで街の誰にも自分の住んでいる所を知られていなかったからです。
だけどノスリさんは、この少年には何か自分に近いものを感じていました。それが何なのかはわかりません。それが知りたくて家に招待したのかも知れません。自分でもよくわからなかったけれど、なんだか彼とちゃんと話がしたかったのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます