こんな恋愛開始はありですか?

「僕を惚れさせて下さい_」



「…白昼堂々はくちゅうどうどう痴漢行為ちかんこういですか…?」

本当はこういう危険そうな人には刺激する言葉を言ってはいけないのだが、思考が停止しかけてる私にはそんな事考える余裕は無く本音が出た。

「えっ、あ、違っ、待って」

かなり動揺しつつ男は私から一歩距離を置いた。

「では新手あらてのナンパですか?」

と私は更に畳み掛ける。

すると少し声が大きかったのか

「あら、結衣ちゃんどうしたの?彼氏と喧嘩?」

とニヤニヤしながら近所の叔母さんが声をかけてきた

「違うの!今この人にナンパされたの!」

チャンスと思い、助けを求めるが次に叔母さんの口から出てきた言葉は私の停止しかけの思考を完全にシャットダウンさせた


「何言ってるの結衣ちゃん?谷城やしろくんはあなたの"彼氏"でしょ?」


___え?

形勢逆転けいせいぎゃくてんとはこの事なのだろうか

しかしこの谷城と呼ばれた男を私は見た事も聞いた事もない

息を整えた谷城は私に改めて向き直り

「親御さんから何も聞いてない?」

と尋ねてきた。

「うん…」

混乱しつつ、昨日千里と連絡を取ってから電源を切っていたスマホを起動させると両親からの鬼の様な着信履歴とメールがそこには表示された。

一番上のメールを開くと

『お父さんの会社の代表取締役を務めてる方の息子さんと結衣がお見合いする事になりました!早く帰ってきて!』

と書いていた。

血の気が引く感覚を覚えつつ、ゆっくり谷城に向き直ると

「分かってもらえたみたいでよかったよ、では行きましょうか"結衣さん"」

とにっこりと微笑まれた。

しかしその笑顔は先程の様な満面の笑みではなく悪意が見え隠れしていた_

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る