第47話

 休憩を交えながら時間をかけて外周走りを終えて部室に帰ってきた二人を先に訓練を終えていた京也たち出迎える。

 綾や紗奈は疲れてお互いに背中を預けながらながら息を整えていた。

 全員が集まったところに京也が様子を見て話し出す。


「冬休み中はこれからも練習していくからな。各自体調管理や怪我したりしないようにな」


 今日の所はお開きと言う事で部室のドアを開ける綾たちの背中を見送った。


「綾と紗奈はこれらの伸び代に期待だな。加耶はとりあえずこのまま体力付けてもらうしかないな」


 今日の二人からはまだまだ伸びる余地がある箇所が見つかっていた。

 その部分を伸ばしきれば良い護衛役になると京也は感じ取っていた。

 本当は真央が前からやっていたように時間をかけて丁寧に教え込んでいきたいのだが今、そんな余裕は無かった。

 急ごしらえとなってしまうが即実戦で使えるものにするしか無かったのだ。


「元々、私が面倒見て来た訳だしね」


「そうだな。助かったよ」


 真央が教え子が褒められて気分をよくしたのか自慢気に言ったのに対し特に気にせずに返す京也。


「本当はこんな事は起きないのが一番なのにね」


 紗奈たちと別れた時の後ろ姿を思い出しながら里香がしんみりと言った。


「そうだな。そうしたらあいつらも学生でいられたのにな」


 友達を気遣う妹の頭を撫でながらなだめる兄。

 その様子を横から優しい表情で見守る真央。

 さみしそうな表情から気を取り直した里香は決意を新たに意気込んでいた。


「ま、私たちがしっかりしていればあの子たちに余分な事をさせるようなことも無くなるから」


 真央からの言葉もあり完全にやる気になった里香は体を動かしたくなったのか「走ってくる」と言い残して先ほどまで走っていた外周へと向かっていく。


「里香も相変わらずみたいだね」


 真央がしみじみとした感じで言う。


「ああ」


 走って外周に向かう里香の後ろ姿を見守りながら答えた。


「私たちはどうする?」


「なんかやりたい事あるんなら付き合うが」


 そう真央の言葉に返事する京也。自分は特にやりたいこともなく真央に任せるということだった。


「んー、それじゃあ私とサバゲで一線する?」


「あー、いいや。お前とやっても俺が自信無くすだけだ」


「なに?まだ、昔の事気にしてんの」


 この二人は昔NSGの施設でペイントボールの試合を何度か行った事があったがことごとく京也が負かされていたのである。


「流石にあれだけ負け越したらな」


 過去の自分を思い出し苦笑ぎみに否定し続ける。


「でもあれから何年もたってるから今日も同じ結果になるかは分からないよ」


「そりゃあ、そうだが」


 話している間に二人でサバゲをやるという事になってしまい、気は進まずともとりあえずやるかと思い至った京也はそばに置いていたCZ75を手に取り真央とともに旧校舎に戻っていった。


◇◇◇


 数分後。

 そこには落ち込んでいる京也の姿があった。


「まあまあ気を落としなさんなって」


「本人が慰めんなっての」


 冗談交じりに言った真央に苦笑しながら返す。


「俺もあんま、偉そうなことばっかり言ってないでしっかりしないとな」


 そう言って京也は唐突に座り込み自分の反省点を見直し始めた。

 これは京也の一つの癖で、何か失敗したりして落ち込んだ時は反省し自分の改めるところを探し始めるのだ。

 そうして反省することに没頭して気分を落ち着かせ、気持ちを切り替えていくのだ。


「そんなところまで変わってないのね」


 昔を懐かしむように微笑みながら京也に助言をしながらあれやこれやと話し合い、自分自身で苦手と意識していた事や真央に言われて初めて気付いた癖など現時点で分かっていることを洗いざらい話し合うのだった



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