第45話
「くそっ」
手も足もだせずやるせない気持ちから毒を吐く綾。紗奈も悔しさから言葉がでず俯いている。普段こういう時に慰め役に回る加耶も自分が何もできなかった事もあって塞ぎ込んでいた。
京也たちは打ち負かした自分たちが声を掛けるとさらに惨めな気持ちになるだろうと口をつぐんで見守っていた。それから、少し時間が経ち綾たちも普段の冷静さを取り戻す。
「落ち着いたか?」
「ああ、大丈夫だ」
綾たちが落ち着いたのを確かめ京也が話だす。里香や真央は京也に一任しその様子を見守っていた。
「それじゃあ今回の模擬戦を通して感じた事なんだが」
それを、綾・紗奈・加耶が固唾を飲んで聞いている。
「まず思ったんだが、仕掛ける時に弱気になるな」
京也は綾たちが正面からの撃ち合いを出来るだけ避けようとしていた事に気づいていた。そのため、行動が読みやすく対処するのが容易となってしまったのだ。また作戦を一つしかたてずそれに固執してしまったのも敗北の原因の一つだ。
「自分より格上の相手と戦う事もあるだろう。その時に力量差を考えて動くのは良い事だが弱気で戦ってはチャンスの時に前にでれないぞ」
自分の考えが見透かされていたことに気づき惨めになるがそれでも京也から視線を外さずにしっかりと見る。
「今回はそれのせいで俺たちが待ち伏せしている可能性を考慮していなかっただろ。俺たちは自分の命を賭けなければいけないんだ。考えて考え過ぎって事はないさ」
確かにそうだなと、綾たちも納得する。京也は自分の命と言ったが一緒に行動する以上仲間の命も危険にさらすことになるのだ。
「だがまあ、それさえ頭の中に入れていればさっきの作戦も悪くはなかったぞ」
一転して、京也が褒めた事で綾達も少し気分が晴れる。
「それと今回みたいな室内戦ならC.A.Rsystemって言われる構え方も役に立つぞ」
どうやら初耳だったらしく頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。
「簡単に言えばハンドガンを斜めに構えるんだ。右手で撃つ場合は目標に対して右を向いて右手を左手で包み隠すようにして持って肘を曲げてハンドガンを斜めにしてサイトと目線が重なるようにするんだ」
実際にやって見せながら説明をする京也。
「この構え方だと近距離で敵とあっても腕を伸ばしていないから直ぐに対処できるし、簡単に狙いを付けることができる」
実際に綾達も構えて見ると近距離で敵を相手にする場合はこちらの方が動きやすく戦いやすい事に気付く。さらにこの状態からほかの射撃スタイルにも移行しやすくハンドガンを奪い取ろうとしてきた敵にも対処できることに気付く。
「あとは、体のすぐ近くに銃があるからリロードするときやジャムの対処するときにもすぐにできる」
京也からの追加説明を聞きながらこの構え方は確か状況に応じて使えばとても心強い物となると実感していた。
「この構え方すごいな」
実際に自分達でもやってみたからこそ分かる利点や欠点を理解しつつ綾が言う。
「一つのやり方に頼り切るのもよくないが選べる選択肢の中に入れておくのは悪くないはずだ」
京也はそう言って釘をさしてから続ける。
「このC.A.Rsystemにはほかの構え方もあって胸の前に構えたりするやり方もあるんだ」
京也が引き続き構え方について教え、一通りの説明を終えた後はそれぞれの体格や癖などに応じて個別に教えることにした。綾には京也が紗奈は真央、そして加也に里香がつくことになった。
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