第33話
空はその後、里香が教えてくれなかったことに少しふくれっ面になるも、騒ぐこともなく大人しく並んで待っていた。
そして、あっという間に空たちの参拝の番になり、ワクワクした赴きで歩みを進め、少し早歩きになっている空の後ろを京也と里香が空が転ばないかと心配で見守りながらついて行く。
参拝を終え綾たちの待っている所に帰ろうと振り返り、ある異変に気付く。
「なあ、いかにせ人少なすぎやしないか?」
雨が降っている時でもまだ人が多いだろうと思えるほどに人影が見えない。
「確かにそうだね・・・」
里香や空も同じことを思ったらしくキョロキョロと辺りを見回していた。
先ほどまではそれなりにいた人の姿が完全になくなっている。
わずか数秒で人が完全にいなくなるなどあり得ない事だ。
あり得ない事を実現させる能力であるマナの存在を知っている三人は経験からまずそれを疑い、この中で唯一マナの力を使うと力が及んでいる範囲にその人特有の色を見る事ができる目を持ち行使者と呼ばれる立場にある京也に里香と空は目を向ける。
だがしかし、京也の目にもおかしなとこはなく人がいないことを除けば最初に来た時と全くと言って良いほど変化は無かった。
これまでの経験上あり得ない事が起きるのはマナの仕業だったのだが今日はその痕跡が見えない、それはつまり自分たちの知らない事が起きているという事だ。
この状況はよくないことが起きる前兆である事を京也は感で理解し、早く加耶たちと合流しようと考えていた。
なぜなら、これは加耶たちと分かれて行動している京也たちを足止めさせそのうちに加耶を狙う作戦だと察したからだ。
高校の外では加耶に京也たち以外の護衛がついているらしいが、なんの能力も持たなく対マナ用の戦闘訓練を受けていない人間だとマナと相対した時に手も足も出せないままやられてしまう事が多い。
敵の戦力が分からない以上真央たちがいるとは言えそれだけで安心できるわけではない。
京也は厚着で隠していた腰のホルスターからブレン・テンを引き抜きマガジンを入れコッキングして弾をマガジンから送り込む。
里香のP2000も隠し持ってきていたので里香に渡す。
そして、見晴らしのいい場所にいるのは危険だと物陰に隠れるよう里香と空にアイコンタクトで伝え辺りを警戒しつつ走り出した。
物陰に無事たどり着くと里香たちに自分の考えを話し始めた。
「まだ何もしてこないということは、俺たちをここに釘付けさせる事だけが目的なんだろう」
わざわざ敵は自らのアドバンテージである位置がばれていないということを失う様な行動はまだする気が無い様だ。
そして、それはこちらを殺そうとする意思は強くないともいえる。
だが、ここから離れ加耶の元に向かおうとすると襲ってくるはずだと京也は考えていた。
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