第32話

 綾と紗奈のじゃれあいもひと段落した所で、まだ参拝していないと空が言い里香と一緒に行きたいと誘い始めた。


「でも、私たちはもう行っちゃったし」


 普段なら空に付き合うのだが加耶たちを一瞥いちべつし、申し訳なく思いつつも断ろうとした。


「私たちの事は気にしないで良いよ里香ちゃん。この庭園で待ってるから行ってあげて」


 だがそれを止めたのは加耶だった。空の頼み事を断る里香の顔に戸惑いの表情が見えたを気にしての事だった。

 里香が綾たちの方を見ると綾は特に気にしていない風で、紗奈は行っておいでとばかりに手をふっていた。

 何処か抜けてる里香と空だけだと心配だと言うことで、京也は付いていく事になり陸と海はおとなしく夕夜たちと待つことを選んだ。

 残る事になった夕夜たちに自分たちがいない間の事を頼み、京也・里香・空の三人は本殿へと向かった。

 先ほど来た道を戻っていると、りんご飴を売っている店を発見した空が物欲しそうに見ていたのを里香が察して京也に断りをいれ露店に買いに行った。


「はい」


 そう言って買ってきたりんご飴を空に渡す。


「ありがとう、里香お姉ちゃん」


 最初は里香が自分がりんご飴を欲していると分かった事にびっくりしていたが落ち着いた空は嬉しそうに笑顔でお礼を言った。

 それだけなら微笑ましい良い話で終わるのだが里香はちゃっかり自分の分も買ってきており空と一緒にりんご飴をかじっていた。


「おまえは、さっき色々食べただろ」


 と京也が呆れて里香に言うが当の本人は全く気にしてないようで「甘い物は別腹だから大丈夫、ちゃんと科学的にも証明されてるんだよ?」などと言い返した。

 買ってしまった物はしょうがないと諦め里香に苦言を言うのをやめた。

 そして最初に里香が食べ終え、本殿に着くまでには空も食べ終えりんご飴が刺さっていた割り箸はゴミ箱に捨てた。


「だいぶ、落ち着いてきてるな」


 先ほどの人混みを見ていない空はイマイチ実感がわかなく、首を傾げていた。

 一度その様子を見ている京也や里香からすれば今の本殿は先ほどの騒がしさが嘘のような静けさだった。


「さっき来たときはもっと人多くて大変だったんだから」


 先ほどの事を思い出しうんざりした様に言う里香。

 京也も道中またあの長い列を並ばないとならないのかと少し憂鬱になっていたが、実際についてみると先ほどよりも人かなり人が減っていたので、また人が増えないうちにとすぐに参拝することにし、京也と里香はもう済ましているのでメインとなる空を中心に左右に京也と里香が立ち空を挟む形で並ぶことにした。


「里香お姉ちゃんは何をお願いしたの?」


「んー、それは秘密」


「えー、教えてよ。どうせ京也お兄ちゃんは神様なんて信じないって何もお願いしてないだろうし。つまんないじゃん」


 京也は昔、空と話していた時に神様なんて信じていない。もしいたのならもっと良い世界になっているからだ。と言ったことがあるのを思い出した。

 任務でいろんな所で悲惨な目にあってきた人たちを見てきた事があるからだ。


「だーめ」


 里香のどうあっても教えないといった様子に空も不承不承とした様子で聞き出すのを諦めた。

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