第30話
呼びかけてきた声で誰だか検討がついた里香は振り向いて、こちらに手を降っていた人物を発見すると同じように手を振りかえした。
「里香ちゃんの知り合い?」
顔を少し傾げて、疑問に思ったことを聞く加耶。
「んーと、バイト先の上司の子・・・かな」
「なんでそんな自信なさげなのよ」
横で話を聞いていた紗奈が突っ込みを入れた。
「なんでだろうね、あはははは」
その場で考えながら言ったのでしりすぼみになってしまったのだが勿論そんな事を言えるわけもなく、ただ乾いた笑い声をあげて誤魔化すしかなかった。
紗奈はさらに聞こうとしていたが里香を呼んだ人物・・・空が近づいてきたのでやめることにした。
先頭を行く空の後ろを陸と海が着いてきていた。
「里香お姉ちゃんあけおめー」と近くにきた空は言い、里香が「あけましておめでとう」と返す。
すると空は里香の着ている着物を見て綺麗だと褒めていた。
その様子を少し離れて見ていた京也のとこに陸がやってきて挨拶をしてから「すみません、空が騒がしくて」と謝るが元々綾たちとふざけたりしていたので空が来る前から騒がしかったので心配するな、と京也は返事をした。
視線を空の方に戻すと今度は真央も交えた三人で話ていた。
「そういえばここにはどうやってきたんだ?もしかして・・・」
と京也が聞くとどうやら里香の耳にも届いてたらしく、わざと言わなかった箇所の意味を悟って顔を動かしてキョロキョロと見知った人影が無いか探していた。
「ああ、藤堂さんは来てませんよ。来たがってましたけど仕事が残ってたんで他の人に説得させられてました」
「それなら、今日は電車か何か出来たのか?」
「いえ、父さんたちに連れて来てもらいました」
それにしては姿が見えないがと思っていた京也の考えを見透かしたらしい陸は自分の後方のを指差して見せた。すると陸たちの父親であり、京也に銃のことなどを教えた師匠でもある夕夜。そして母親の朝昼あさひは里香に狙撃を教えた師匠である。
二人とも背が高い方ではなく見ただけではそう思えないが実際は力強さが隠されているだけであり、京也たちと手合わせしてもほとんど負けることはない。
「お久しぶりです」
近くに来た夕夜に京也が挨拶をする。
「おお、京也君か。本当にいるとはな」
「そういえば、どうしてここが?初詣に行くとしか伝えてないはずですが」
「陸と空が二人とも初詣とか行ったことないだろうから大きな神社に行くんじゃないか、って言ってそれならここだろうと」
京也の最もな疑問に答えると、陸がハハハと笑って誤魔化していた。
「ちょっとちょっと、私たちを放置するなー」
京也と里香が陸たちと話し始めてから蚊帳の外だった紗奈が里香に後ろから近づき抱きついた。
「わっ、びっくりした。もお紗奈ちゃん」
急に後ろから来た紗奈に驚きながらもじゃれ合う姿を見て空は様々な感情が入り混じった複雑な顔をしていた。
しかし、それも少しの間だけですぐに普段通り様子で紗奈に話しかけた。
「ええと・・・紗奈さんでいいのかな?私は足立空って言います」
「こちらこそよろしく」
そう言った紗奈は手を伸ばし空と握手をかわす。
それから綾と加耶と陸たちも順々に挨拶をする。
加耶の苗字を聞いた時夕夜と朝日は一瞬考えるそぶりをしたが周りの誰もそのことには気づかなかった。
綾と陸は京也を介してすぐに打ち解けていた。
二人とも妹がいるという共通の話題があることが自己紹介で分かった事も幸いしたのだろう。
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