第29話

 そして、無事に全員の参拝が終わり、とりあえずおみくじでも引こうという話になった。

 みんなそれぞれ100円払いおみくじを引き、全員揃ったとこで一斉に中を確認し始めた。

 まず最初に反応があったのは我先にと引いた里香だった。


「吉かあ、リアクションに困っちゃう・・・」


「いやいやおみくじってそういう物じゃないからね、里香」


「はーい。それで紗奈ちゃんはどうだったの?」


「私?私も吉だったよ」


 自分の引いたおみくじを里香に見えるように、ひらひらと揺らす。


「俺は大吉だぜ」


 横から綾が勝ち誇った顔をして口をだしてくる。


「はいはい、よかったね」


 紗奈は相手にせずそれを軽くあしらう。


「俺は小吉」


 京也がどうでも良さそうに言い、真央は「中吉」と短く答える。


「真央ちゃんはちょうど真ん中だね」


 里香はそう言った後なかなかす。自分から言い出さない加耶に「加耶ちゃんは?」という意味で目線をだす。


「私は凶だった」


「・・・大丈夫だよおみくじだけで何もかも決まる訳じゃないし、いざという時は私たちが守ってあげるから」


 残念そうに言う加耶に励ましの言葉を送る里香。


「そんな、守るって大げさだよ。でも、ありがとう」


 それを聞いた加耶は、さっきの事はもう気にしていないと苦笑いしながら答える。


「次はどうするよ」


 綾がそう言うとやりたいことがあったらしい里香が「私、絵馬書いてみたい」と言った。


「そういえば私も書いたことないかな」


 と加耶が興味を示し、他のみんなも同意見の様子だった。


「絵馬ってどんな風に書けば良いんだろ・・・真央ちゃん知ってる?」


「なんで私」


 真央と仲が良くなければ不機嫌なのかと疑うかもしれないがそういう事では無く、ただ思ったことをそのまま口に出すことが多いだけである。


「真央ちゃん結構物知りだから」


「ん、そうでもないけどね。・・・絵馬に書くのは基本的に願い事だね、でも思いがこもってれば問題無い」


「そうなんだー、ありがと。それじゃ買ってくるね」


 真央に教えてもらった事を覚えた里香は絵馬のお金を全員から回収し買いに行き、帰ってくると配り始めた。


「あそこで書くんだって」


 里香は買ってくるときに社務所にいた巫女に聞いたのか今いる場所から右手にある机が置かれている場所を指差しながら得意げに教える。

 みんなで書きに行き絵馬掛けに、掛け終わり「それじゃ、お守りでも買って行きますか」と紗奈が言い、みんなも異存はない様子だったので絵馬を買った社務所に行きそれぞれお守りを買い小腹が空いてきた一行は露店で売っていた、たこ焼きと焼き鳥を買いそれをみんなで分けて食べ、飲み物として甘酒を買って飲んだ。

 飲み食いが終り、どうせならもう少し辺りを見て回ろうと言う話になったので庭園や摂社・末社などと呼ばれるところも見ることになった。

 この神社の庭園には池がありそこには鯉がいる。

 その池の鯉を眺めていると後ろから「里香お姉ちゃーん」と呼ぶ声が聞こえてきた。

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